20世紀最大のピアニストの1人、リヒテルが晩年に好んで演奏していた作品【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
グリーグ『抒情小曲集』 晩年のリヒテルが好んだ美しき小品集
今日8月1日は、20世紀最大のピアニストの1人、スヴャトスラフ・リヒテル(1915~97)の命日です。 ドイツ人の父とロシア人の母のもと、ウクライナに生まれたリヒテルは、独学でピアノを始め、15歳のときにオデッサ歌劇場のコレペティートルに採用されます。舞台稽古のピアニストとしてオペラやバレエに親しむことでピアノの腕を磨いたリヒテルは、その後モスクワ音楽院に入学。名教師ゲンリフ・ネイガウスに師事することで、超一流ピアニストとしての道を歩み始めます。 レパートリーは、J・S・バッハから20世紀音楽までと幅広いながらも、自分に合う音楽のみを厳選して演奏してきたことから、全集的なアルバム制作や演奏とは無縁であったことが印象的です。 そのリヒテルが、晩年好んで演奏していた作品の1つが、ノルウェーの作曲家グリーグ(1843~1907)が手がけた小品集『抒情小曲集』でした。 全10集、66曲からなるこの曲集をすべて演奏することはありませんでしたが、残された録音は、晩年のリヒテルの古潭の境地が伝わってくる名演揃いです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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