投資家引き揚げにも損失にも動じず、逆張り貫くTCWの債券戦略
(ブルームバーグ): 米資産運用会社TCWグループのブライアン・ウェーレン最高投資責任者(CIO)は、同社ファンドが損失を積み上げる原因となった戦略に固執している。ウォール街では大半の運用会社が放棄した戦略だ。
高水準にある米政策金利がいずれ、経済にひび割れを生じさせるというのが同氏の見立てだ。そして成長が停滞すれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は9月にスタートした利下げを加速し、短期の米国債を買い集め社債を売り持ちする同社の戦略が晴れて報われるようになるという。
「ファンダメンタル面で確信のある取引は、タイミングが早過ぎることが多い」とウェーレン氏。約1000億ドル(約15兆4000億円)の運用を監督する同氏は「短期的な不調という代償があっても最終的には奏功することを、歴史が示唆している」と述べた。
その不調はこのところ悪化している。ウェーレン氏の旗艦ファンド、メトロポリタン・ウェスト・トータル・リターン・ボンド・ファンドは今年の成績で、87%の競合に後れを取っていることが、ブルームバーグがまとめたデータに示されている。3年前に債券市場を動揺させたコロナ禍後のインフレ急伸と、それに続いた連続利上げによる損失から、同ファンドはまだ回復していない。ブルームバーグがまとめたデータを使ってその期間で見ると、同ファンドは85%の同業より成績が劣っている。
その結果が投資家の一斉引き揚げだ。モーニングスター・ダイレクトのデータによれば、過去1年に引き揚げられた投資資金は180億ドルに近い。これは他のアクティブおよびパッシブ運用債券ミューチュアルファンドのどれよりも多い。2021年からの流出額は410億ドルに上る。
それでもウェーレン氏とそのチームは屈しない。「バリュー逆張り的なファンダメンタル主導の運用会社」に投資資金の一部を振り向けることにクライアントは価値を見いだしていると、同氏は述べた。