プレ開幕戦の心理戦…阪神ドラ1佐藤輝明がヤクルトの”全球内角攻め”を返り討ちにした衝撃の神宮アーチの価値とは?
阪神のドラフト1位ルーキー、佐藤輝明(22)が16日、神宮球場で行われたヤクルトとのオープン戦の4回二死一塁から特大の5号2ランを放った。ドラフト制導入後の新人のオープン戦5本塁打は1972年の佐々木恭介氏(近鉄)以来、49年ぶりの最多タイ記録。それ以上に価値があったのは、課題とされてきたインコースのボールを引っ張って本塁打にしたこと。開幕カードのヤクルトバッテリーを悩ます衝撃のアーチとなった。佐藤は4打数2安打2三振。なお試合は阪神が9-6で勝利した。
課題とされた内角球を引っ張って特大5号2ラン
“プレ開幕戦”でヤクルトバッテリーは心理戦を仕掛けてきた。4回二死一塁で阪神の怪物ルーキーの佐藤を迎えてマウンド上には2016年のドラフト1位左腕の寺島成輝。初球にインコースへ140キロのストレート。ボールになったが続く2球目にもインコースへ141キロのストレートを投じた。反応した佐藤は、スイングをしようとバットを動かしたが、ハーフスイングで止め判定はボール。内角攻めは、これだけでは終わらなかった。捕手の西田明央は、続けて内寄りにミットを構えた。3球目もインコースへ。139キロのボールは若干抜け、右肩から顔面付近にきたが、佐藤は平然としていた。 カウント3-0。 ヤクルトバッテリーは、なんと4球目もインハイへ。140キロのストレートがストライクゾーンにくると佐藤がスイング一閃。打球は、あっという間に視界から消えてライトスタンドの上段で弾んだ。「打った瞬間、入ったと思った」 佐藤は、すぐに走らずに打球の行方を見守る余韻を楽しむほど。 「シーズンに入ったら内を攻められると思うので、そこをしっかり打てたのが良かったです」 佐藤は狙っていたのだ。 オープン戦の歴史をまたひとつ塗り替えた。元近鉄監督の佐々木氏に並んだこの5号2ランには、特別の価値がある。ヤクルトバッテリーの徹底した攻めを打ち砕いて課題とされていたインコースのボールをホームランにしたことである。 後ろ重心の軸で回るアッパースイング。しかもインコースをさばくにはリーチが長い。ここまで4本塁打はすべて真ん中から外のボールを逆方向に打ったものだ。変化球は引っ張るが、インコースのストレートを引っ張った打球は、ほとんどなく「インコースを攻められると苦しいのではないか」と見られていた。 元千葉ロッテの評論家の里崎智也氏も、捕手目線で「あのバッティングスタイルを見ると内角を攻めたくなりますよね。そこを意識させておいて低めに落とす。あるいは外に変化させるという配球で崩したい」と分析していた。