18歳で経験した「人生最大のカベ」 菅楓華が思い出す1年前のできごと「すごいスポーツを選んでしまったな、って(笑)」【プロテストの記憶】
29日から日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は最終プロテストを開始。国内最高峰ツアーの道を切り開く戦いが始まっている。すでに合格率“3%”という狭き門をくぐり合格を果たした選手たちにとっては、“プロテスト”というのは一体どんなものだったのか? 昨年、高校3年生で一発合格を果たした菅楓華に聞いた。 プロテスト合格直後…19歳の渋野日向子さんが初々しい【写真】 ◇ 「めっちゃ不安でした。自信よりも怖さや、やってきたことができるのかという不安があって焦っていましたね。それははっきりと覚えています」 ルーキーとして、現在レギュラーツアーを戦う19歳の菅は、当時の記憶をたどると、こう言って苦笑いを浮かべた。合格から1年が経過しても、あの時の気持ちは鮮明に思い出すことができる。 宮崎県にある日章学園高3年時に初めて受験したテストで一発合格。その結果だけを見ると順調という言葉がぴったりだ。だが当然ながら、そこに至るまでの時間は“不安”や“焦り”に満ちていた。「自分で“1回しか受けない”って決めていたんです。そうでないと『来年もあるから』と考えて、甘えにつながってしまうから。そんな考えを排除するため1回だけのチャンスと決めてやりました」。そんな決めごとがプレッシャーにもつながったが、「受かると信じ込んでいた」という“信念”も支えに戦い抜いた。 昨年のプロテストは、まず福岡で受けた第1次予選をトップで通過。そして茨城での第2次予選でも20位になり、最終へとコマを進めた。岡山県のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部が舞台となった最後のステージは、初日から連日の「68」。2日目終了時点でトップにも立った。これが気持ちに、少しの余裕を生み出した。ただ「やっぱり楽しくはなかったですね(笑)」と必死さが上回ったコースで、いい思い出は残っていない。 他のどんな試合とも異なる雰囲気は、「どう説明すればいいんだろう…」と、言語化するには頭を悩ませるもの。当時18歳だった高校3年生にとっては、まさに“未知なる経験”でもあった。「周りには年上の方もたくさんいるし、そういう面でも緊張しました」。この状況のなかで“1回だけ”と決めた勝負に打ち勝つことができた。 ツアープロとして活動する今、この“合格”の価値の大きさを改めて痛感している。現在JLPGAは、原則的に正会員でないと、QT参加や、アマチュア資格放棄後の推薦での試合出場などを認めていない。1年前の試練を乗り越えたからこそつかむことができた、現在の生活だ。 「もちろんプロになってからが大事ですけど、今は解放感も強くて楽しいです。試合に出られる回数が違うし、いろんな方と知り合って、色んなコースを回っていくことが、これからのゴルフ人生においていい経験にもなる。優勝争いもプロテストに合格していないと経験できないこと。受かってよかったなと、いつもありがたみを感じています」 菅に『プロテストを一言で表すと』という質問を投げると、ちょっぴり悩んだ後、「人生最大のカベ」という答えが返ってきた。 「ここからも優勝など、いくつもカベがあるけど、それも最初のカベをクリアしたから挑めること。(プロテストは)1年に1回しかないし、あれだけたくさんの人が受験して20人くらいしか通らないって…すごいスポーツを選んでしまったなって思います(笑)」。19歳になった菅は、よろこびをかみしめながら、ルーキーとしての毎日を過ごしている。(文・間宮輝憲)