「先祖のたたりがある」と脅して数百万の壺を買わせ…“霊感商法”を信じてしまう人の心の中では何が起きているのか
〈「ダサい」「時代遅れ」と思われていたお菓子のパッケージ変更が大炎上…あえての“炎上商法”は本当に効果があるのか?〉 から続く 【写真】この記事の写真を見る(8枚) 「これを買わないと不幸になる」と不安を煽り、高価な壺やアクセサリーなどを購入させる“霊感商法”。当事者ではない人から見ると「どうして騙されてしまうのか」と理解できないものがあるかもしれません。 愛知淑徳大学の心理学部教授である久保 (川合) 南海子さんは、自分の認識が世界の見え方に影響を与える「プロジェクション」という心の動きについて指摘します。特に、実際には「ない」ものを現実に「ある」ものへ重ね合わせてしまうプロジェクションのことを、異投射と分類しています。 ここでは、そんなプロジェクションについてさまざまな事例を紹介しながら解説していく『 イマジナリー・ネガティブ 認知科学で読み解く「こころ」の闇 』(集英社新書)より一部を抜粋。“霊感商法”で高価な壺を購入してしまう人の心の中では、一体何が起きているのか――。(全4回の3回目/ 続きを読む ) ◆◆◆
不安を煽り、購入や寄付を促す「霊感商法」
2022年7月、安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃されて死亡した事件では、山上徹也被告が殺人や銃刀法違反などの罪で起訴されています。山上被告は母親が多額の献金をしていた「世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)」に恨みを募らせた末、事件を起こしたと見られています。被告の母親は長年にわたり、死亡した被告の父親の生命保険金や、被告の祖父から相続した不動産を売った金などあわせて1億円超を、旧統一教会に献金していたとされています。 この事件をきっかけに、1980年代から問題になっていた信者に対する高額な献金の強要や霊感商法が、再び大きな社会的関心を集めることになりました。2022年12月には、教団の被害者救済を図るための新たな法律が成立しました。法人が霊感などの知見を使って不安を煽り、寄付が必要不可欠だと告げるなど、個人を困惑させる不当な勧誘行為を禁止することなどが定められました。禁止行為に違反し、行政の勧告や命令に従わなかったばあいには、1年以下の懲役か100万円以下の罰金という刑事罰も科されます。 霊感商法とは、霊能者や占い師を装った人物が「いまのままではあなたや家族が不幸になる」「○○をしないと先祖の祟りがある」などと言って不安や恐怖を煽り、数百万円もの高額な壺や印鑑や数珠などを購入させたり、多額の寄付をさせたりして、不当に大金を奪いとる商法のことです。
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