読めば草花を見る目が変わる!植物が持つ脅威の能力。
植物の力を生かした新しい農薬を開発中。
古谷 先生が行っている研究は、今後どんな分野に応用される可能性があるのでしょうか? 豊田 実際に今、民間企業と一緒に特許を出願しながら取り組んでいるのが、新しい農薬の開発です。先ほど紹介した、植物が葉を傷つけられたという情報を全身に伝える研究で、最初にグルタミン酸が出ることがわかったんです。 古谷 グルタミン酸! うまみ成分のひとつですよね。食に関わる仕事をしている私にとっては大事な成分です。 豊田 グルタミン酸は我々の脳内では神経伝達物質としても働く物質で、記憶や学習に関与していると考えられています。植物にも似たような仕組みがあって、虫に食べられると傷ついた細胞からグルタミン酸が出る。それを葉の細胞が受け取ることでカルシウムイオンの信号が全身に伝わり、防御反応を引き起こすことがわかりました。ですからグルタミン酸を使うことで、害虫を殺すのではなく、植物全体の抵抗力を上げる農薬を作ろうとしているんです。そうすれば環境や人体への負荷も少なくなるでしょうし、将来的には食糧問題の解決にも貢献できれば。 古谷 植物の育成剤に近いような、全く新しいタイプの農薬。おもしろいですね。私も木の栽培などを進めていきたいと思っているので、いずれ先生たちの研究成果が農業や林業の世界で活用される日を楽しみにしています!
今回ふたりが訪れたのは…国立科学博物館附属 自然教育園
東京都心にありながら約20ヘクタールの広大な面積を誇る森林緑地。イヌシデ・ケヤキなどの落葉樹、スダジイ・カシ類・マツ類などの常緑樹が広がり、四季を通じてさまざまな植物を観察できる。園内の植物には種名表示板や解説板が整備されているなど、自然を深く知るための工夫も。 ●東京都港区白金台5・21・5 TEL.03・3441・7176(代表)