「新型コロナ」今シーズンの定期接種、新たに開発するワクチンを使用する方針へ 厚労省が決定
厚生労働省の専門家委員会は、今年度の新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、オミクロン株の新系統「JN.1」やその派生型に対応したワクチンを使う方針を決めました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
厚生労働省が決定したワクチン接種の方針の内容は?
編集部: 厚生労働省の専門家委員会が決定したワクチン接種の方針について教えてください。 中路先生: 2024年5月29日に開催された厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の小委員会は、今シーズンの定期接種で使用する新型コロナウイルスワクチンの方針について、「新しい系統のJN.1に対応するワクチンを使う」と決定しました。小委員会では、国内での直近4週間の検出数が、JN.1系統とその亜系統が50%超、XDQ.1系統が30%程度と報告されていました。 JN.1をめぐっては、WHO(世界保健機関)の専門家グループが「既に承認されているXBB系統の1価ワクチンでも、初期のJN.1系統に対する一定の効果が期待される一方で、さらに変異が続くと発症予防効果が現状より弱くなる可能性がある」と言及しています。つまり、WHOもJN.1系統のワクチンを推奨している形となります。今回、専門家委員会が決定した方針は、こうした背景を受けてのものになります。JN.1系統のワクチンはまだ流通していませんが、今後は各メーカーによる開発や承認申請を進めていくことが予想されます。
現在の予防・診療体制は?
編集部: 新型コロナウイルスをめぐる現在の予防・診療体制について教えてください。 中路先生: 新型コロナウイルスの予防について、新型コロナウイルスワクチンは2024年3月まで全額公費負担、つまり無料で接種を受けることができました。しかし、2024年4月からはインフルエンザと同じように、原則接種費用の一部自己負担が求められる定期接種に変わりました。 新型コロナウイルスの医療費を巡っては、2021年から治療薬を全額公費で負担をしていましたが、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行したことを受けて、2023年10月に治療薬は所得に応じて3000~9000円の自己負担となりました。そして、2024年4月からは公費負担を全廃しています。そのため、治療薬は窓口負担の割合に応じて1~3割の支払いを求められることになります。重症化リスクがある人向けの「ラゲブリオ」は、窓口負担3割の人で約2万8000円となります。また、軽症や中等症向けの飲み薬である「ゾコーバ」は、3割負担の人で約1万6000円となります。入院患者向けに使われる点滴薬「ベクルリー」は、3割負担だと約5万6000円です。