精神科医がすすめる、節約が必要な老後に「豊かな食生活」を送る方法
自宅でベジタブルヤードの代わりにハーブを栽培
山梨出身の私が東京に来ていちばんがっかりしたのは、野菜から青臭さを感じないことでした。本来、野菜はちぎったりしていると、ちょっと手が臭くなるくらいの「青い臭い」を放つものです。 海外で暮らしていたとき、いちばん羨ましかったのは中心街を少しはずれると広い庭付きの家が普通で、その庭の一角にはベジタブルヤード(菜園コーナー)が作られていることでした。彼らは、家族が食べる野菜はちょっとしたものなら自宅で作るのがいちばんと考えているのですね。 自宅で作れば何より新鮮で、トマトなら完熟のものなどが最高の状態で食べられます。無添加無農薬なので安心安全、そのうえ家計の節約にもなるので、3倍お得な暮らし方でしょう。 「わが家で食べる野菜は自宅で作る」というライフスタイルは、日本でも少し前まで当たり前のものでした。裏庭には葉ものやナス、キュウリなどが植えられ、毎朝、食べ頃になったものを味噌汁に浮かべたり、ザクザク切って塩でもんで浅漬けにしたり......。 しかし、都会のマンション暮らしでは、そんなことはできません。ハーブをプランターで育てるだけで我慢しているという人も多いようです。それでも疲れたとき、特に心が疲れたときに温かなハーブティーの効果は絶大です。温かな飲み物は心をほっこりさせてくれますし、風邪気味でもハーブティーを飲んで寝ると、翌日はすっかり風邪が吹き飛んでいることもよくあります。 ハーブはスーパーなどで手に入りますが、案外高価です。少量しか使わないので一度では使いきれず、次に使おうとすると乾いてしまったり、しおれて無駄になってしまったという場合が少なくありません。 知人の家では、プランター2つをハーブ専用に使っています。ここにミント、ラベンダー、ローズマリー、レモングラスなどを植えてあるのです。また、イタリアンパセリ、シソも一株ずつ植えてあります。 ハーブなどは春先に苗を植えるだけ。ときどき液肥を与えたり、虫がついたら退治してやるぐらいです。それだけで春から夏、さらには初秋まで、思いついたときにいつでも新鮮な葉をつまみ取り、使うことができるそうです。 仕事に疲れたときなどは、ミントの葉を数枚ちぎって、ティーカップに入れて熱い湯を注ぐ――。その瞬間、立ち上る香りの清々しいこと。新鮮なハーブならではの楽しみです。さらに、はちみつを少量入れるとほのかに甘く、小腹を満たす効果もあるので間食に手を伸ばすことがなくなり、ダイエット効果も期待できます。 スーパーなどで買ってくるよりずっと経済的なことは、言うまでもありませんね。高齢期の節約生活は、何より「みじめな雰囲気」にならないようにすることが大切ですが、プランターでハーブを作ることは、節約よりもむしろナチュラル、ヘルシー感を与えるほうが高く、命を育てる喜びも堪能でき、それだけで心豊かになるでしょう。
保坂隆(精神科医)