野菜と魚がまさかのコラボ! 温室効果ガスを7割削減し、収穫量は7倍に!? 食料生産の常識を変える循環型の新農法「アクアポニックス」とは
野菜と魚を一緒に育てるアクアポニックスという農法が、少しずつ広まりつつあります。化学肥料を使用せず、資源を循環させることで脱炭素にも貢献できるという新しいシステムの普及に取り組んでいるのが、アクポニ(横浜市)代表取締役の濱田健吾氏(46)。同社が思い描く持続可能な食糧生産のかたちとはどんなものなのか、話を聞きました。(ライター・編集者/小泉耕平) 【写真】フタを開けると、そこにはチョウザメとティラピアが…
養分と水の循環で温室効果ガス7割削減
神奈川県藤沢市の住宅街の中にあるアクポニの自社農園「ふじさわアクポニビレッジ」のビニールハウスを訪れると、そこには不思議な光景が広がっていました。 自然光が差し込む明るいハウス内には、人間の背丈を超える高さの白い柱が立ち並び、その柱には上から下までレタスやセロリ、空心菜といった葉物野菜がびっしり。よく見ると、柱の上部からは植物のための栄養を含んだ水が絶え間なくしたたり落ちています。 しかし、最大のサプライズはここからでした。 濱田氏が私たちの立つ床のフタを開けると、そこには50~60㎝のチョウザメたちが悠々と泳ぎ回っています! チョウザメといえば、卵が高級食材キャビアとして珍重されることでおなじみです。 隣の区画には、アフリカ原産の食用の小型淡水魚・ティラピアの大群が。ハウス全体の床下で、約30匹のチョウザメと約500匹のティラピアが養殖されているのです。 これこそが、野菜の水耕栽培と魚の養殖を掛け合わせたアクアポニックス。魚の排泄(はいせつ)物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収。浄化された水が再び魚の水槽に戻るという循環をぐるぐる回すことで、環境に優しい食料生産を実現する仕組みです。 濱田氏はそのメリットをこう語ります。 「一つの施設で野菜と魚を同時に育てるので、生産性が高いのが特徴です。魚の排泄物を養分とすることで化学肥料を使用せずに野菜を栽培できますし、同じ水が浄化されて循環するので魚タンクの水換えも不要です。 肥料の生産や運搬にかかるエネルギーが抑えられることで、脱炭素にも貢献できる。養液を使った通常の水耕栽培と比べ、温室効果ガスの排出が7割削減されるという論文も出ています」