ドイツ戦車の「ボコボコ」何のため? 疑心暗鬼の“労作” 最後は意味ナシって気付いちゃった!
大戦後期のドイツ戦車装甲の謎
今から80年前の1944年12月16日、第二次世界大戦の西部戦線において、アメリカ軍を中核とした連合軍の進撃を止めるべく、アルデンヌ高地においてナチス・ドイツ最後の大反攻作戦が開始されます。同攻勢には様々な呼び方がありますが、映画のタイトルにもなった「バルジ作戦」が一番有名です。 【すっごいデコボコ!】コーティングされた「ティーガーII」接写してみた(写真) この戦いに、ドイツ陸軍は後期の主力戦車となったV号戦車「パンター」や同車の砲塔を排し駆逐戦車に改造した「ヤークトパンター」、さらには「ティーガーI」「ティーガーII」といった貴重な重戦車戦力まで多数投入しています。これらをよく見ると、車体表面がザラザラに波打っている車両が多いです。 実は、このザラザラは装飾という訳ではなく、「ツィンメリット・コーティング」と呼ばれる特殊な表面処理です。主な目的は、歩兵携行の対戦車兵器である磁石式の吸着地雷対策用で、第二次世界大戦後期にドイツで運用されていた戦車や装甲車などに施されていました。
「敵もこの強力な兵器を使うかも」という危機感から
吸着地雷とは、磁力を使って装甲表面に吸着させることのできる爆弾で、爆発のエネルギーを一点に集中させる成形炸薬効果を利用して装甲に穴を開け、金属のジェット噴射で装甲に穴をあけ撃破する兵器です。ドイツ軍では1942年から使用していました。 歩兵であっても巨大な戦車を一撃で撃破するこの兵器を、ドイツは敵軍もコピーして使ってくるのではと危惧していました。そこで対策のため、装甲表面に硫酸バリウムやポリ酢酸ビニル、おがくずなどの非磁性体を原料とした素材を塗ることで、磁石を使った兵器が使用できないようにしました。これが「ツィンメリット・コーティング」です。 名前の由来は、開発したツィマー社にちなんだものだそうで、1943年8月に制式化されたといわれています。最初はただ装甲面にコーティングをベタ張りしていましたが、はがれ易かったため、後期の戦車に見られるような波打った状態のものになりました。