職場の「不正」見て見ぬふりはなぜ起きるのか 私的なものを経費申請、文具の持ち帰りなども
数年前、私の同僚は、子どもの学用品、家族のホリデーカードの切手、フロリダでの家族旅行の費用など、さまざまな個人的なものを定期的に大学に請求していました(この慣行は、大学事務局が関与するようになってやっとなくなりました)。 世界中の政治家は、個人的な支出を事業費として請求することがよくあります。例えば、英国の国会議員が、マッサージチェアやキットカットバー(訳注:お菓子)、一族が所有する土地の堀の清掃費などを請求していたことが発覚しています。
また、カリフォルニア州選出の共和党下院議員ダンカン・ハンターは、選挙資金から25万ドル以上をイタリア旅行や息子のゲーム、一家で飼っていたウサギのエッグバートちゃんの航空券などに支出していたことで訴えられています。 これらの事例に共通するものは何でしょうか? 事務用品の棚からペンを持ち出すことと、家族旅行を事業経費として計上する行為では、明らかに不正の規模が違います。しかしすべての事例で、何が起きているのかを知っていながら、見て見ぬふりをすることを選んだ人たちがいたのです。
それは、経費の処理を担当した事務アシスタント、あるいはウサギの旅行領収書を見た選挙管理委員会の会計係、もしくは会社の税務申告書を検証した監査法人かもしれません。 しかし、私たちがその人の立場であれば、ほとんどの人が同じ選択をしたと思います。悪事を働いた人を非難すれば、特にその人物が権力のある立場に就いていたときに、仕事上、大きな影響を被る可能性があるからです。 ■業務成績が悪い従業員なら公然と非難?
悪事を無視して利益を得るのは個人だけではなく、雇用主も同じです。 特に高い地位に就いている人にその傾向が認められます。ベイラー大学のマシュー・クエイドとその研究グループは、全米のさまざまな職種の従業員とその上司300組以上のデータを収集しました。 上司は、従業員の非倫理的行動、例えば勤怠報告書や経費報告書の改ざん、機密情報の不正使用などと、業務全般の習熟度を評価しました。そして、従業員は職場でどの程度仲間外れにされていると感じているのかを評価する尺度に回答しました。