職場の「不正」見て見ぬふりはなぜ起きるのか 私的なものを経費申請、文具の持ち帰りなども
エンロンが財務諸表の定期的な監査を行うために雇っていた有名な会計事務所アーサー・アンダーセン(訳注:世界有数の会計事務所だったがエンロン事件がきっかけで2002年に解散)の複数の幹部たちは、損失を隠そうとする不正行為のことを認識していました。 ■沈黙することの仕事上のメリット 一人の人間がどこまで知っていたのかはその人物の立場によって異なりますが、彼らの多くは、見て見ぬふりをして金銭的な利益を得ていました。
その結果、エンロンの創業者のケネス・レイ、CEO(訳注:最高経営責任者)のジェフリー・スキリング、CFO(訳注:最高財務責任者)のアンドリュー・ファストウを含む16人が金融犯罪を認めて有罪、さらに5人が有罪となりました。 しかし、それ以上に多くの人たちが、何が起きているのかをある程度知っていながら、この事件を止めるために何もしなかったのです。 エンロンの破綻は大きな注目を集めましたが、何年も報道されなかったホワイトカラー犯罪(訳注:企業の経営陣・管理職など、高い政治的・経済的地位を有する人々によって行われる横領・背任などの犯罪のこと)はこれだけではありません。
2005年には、民間軍事会社タイコのCEOのデニス・コズロウスキーとCFOのマーク・スワーツが、会社から4億ドル以上を不正流用して有罪判決を受けました。 彼らは、株式詐欺や不正なボーナス受給を含むさまざまな金融犯罪を行っており、会社の資金を流用して巨大な邸宅や高価な宝石を入手し、桁違いに派手なパーティーを行うなどの贅沢なライフスタイルを送っていました。 2018年には、ホルヘ・サモラ=ケサダ医師が医療詐欺で逮捕・起訴されました。彼は、高額医療を行うために、患者を重病や末期の病気と偽って診断するなどして2億4000万ドル以上の虚偽の医療費を請求した罪に問われています。
彼はこの詐欺によって、多数の住宅用不動産、高級車、自家用飛行機を購入していました。 ■個人的な支出を経費で請求 非倫理的な企業行動は、トップニュースを飾るようなケースに限定されません。このような行動は、あらゆる規模の企業で常に発生しています。 架空の領収書を提出する、個人的な経費を業務上の経費であるかのように申請するといった経費精算の不正は、大企業(従業員数100人以上)の不正の11%、中小企業の不正の21%を占めています。