「不安な人にこそ読んでほしい」 鈴木エイトが傍聴した『HPVワクチン被害』裁判レポート
「彼女たちが嘘をついているとは思っていない」
閉廷後に司法記者クラブで行われた会見の内容も投稿した。 GSK代理人は会見で、原告の症状はHPVワクチンとは関連性がなく転換性障害や機能性身体症状といった社会心理的因子による様々なストレスから生じる疾患だと、各メディアの記者に説明した。 私からは毎回法廷でGSK代理人の池田裕彦弁護士が証人席の原告を見つめる視線が気になっていた。何かを読み取ろうとしているのではないかと思い訊いてみた。以下はその際の池田弁護士の返答である。 「辛いだろうなと思って見ているんですけど、我々は彼女たちが嘘を吐いているとか詐病とは思っていないんです。おそらく症状はあると思うんですよ。 ただ、それが周りのいろんな大人たちによって、それは医師であることもあり、様々な人たちによって”ワクチンによってそうなっているんだ”という風に思い込まされていると思うんです。 最後の方なんて本当に壮絶な人生を送って来られていて、それをもう一回法廷でほじくり出されてるっていうか、それはご本人とっては辛いだろうな、可哀想だなという気持ちで見ています」 MSD代理人の会見でも、カルテから原告の症状が思春期の世代に見られる疾患であり、HPVワクチンとは関係のない心因性その他の要因によるものとの説明があった。 両製薬会社とも、原告が正しい診断と適切な治療を受けることが重要だと言及している。
なぜ大手メディアは継続的に報道しないのか
製薬会社の会見の前に原告弁護団が会見を行ったが、原告弁護団、製薬会社2社の会見に参加していた司法記者クラブ加盟社の記者は4人のみで、私のほかは原告の支援者メディア関係者が数人いただけだった。 提訴時には大々的に報じた大手メディア各社だが、訴訟の経過を継続して追っている社は皆無だ。そのことによって正確な情報が世間に伝わらず、いまだに「危険なワクチン」との認識が根本的に改まることがない。 「被害者に寄り添う報道」は当初の報道姿勢として重要ではある。しかし誤った方向への感情移入が問題を複雑化させてきたとも言える。訴訟の経緯を原告サイドに肩入れせず、事実ベースで伝えているのは私ひとりである。 メディアは当初の副反応報道がどのようなハレーションを起こしてきたのか検証すべきだ。 当時、読売新聞のヨミドクターの編集長だった岩永直子氏は、今月「HPVワクチンについて肯定的な報道をしたら、大手新聞社にいられなくなる時代がありました」とポストしている。