「不安な人にこそ読んでほしい」 鈴木エイトが傍聴した『HPVワクチン被害』裁判レポート
法定内に悪意を持った人はいない
この「誤った感情移入」は一部の政治家にも言えることだ。 原告から陳情を受けるなどして原告の支援者となった地方議員の活動が、正常なワクチン行政を阻害してきた側面がある。HPVワクチンによる薬害であることを疑わない地方議員・国会議員が少なからず存在している。 政治家が被害を訴える社会的弱者の声を聞くことは、メディアと同様、最初の段階での対応として問題はない。重要な取り組みだ。だが、政治家としては、ナラティブベースの感情論に流されず、最新の科学的知見を基に情報をアップデートしていく必要がある。 1800万インプレッションを超えたツリーの終盤に「ひとつだけ言えるのは、法廷内に悪意を持っている人は一人もいないということ。それがこの問題をより複雑にしている」と書いた。 原告弁護団(薬害弁護団)は原告の症状をみて不憫に思い、それまでの薬害訴訟で積み重ねてきた勝訴の経験から、当初は勝てる裁判だと確信していたのだろう。 提訴前に会見を開いて“被害者”を募り、原告団を結成し集団訴訟を起こした際に「原告からの着手金なし」としたのも、勝訴の見込みがあったからであろう。 だが、その後の科学的知見、エビデンスの積み重ねによって旗色が悪くなり、勝訴する可能性が減っているのが現状である。
バランスを欠いた“両論併記”報道
原告弁護団の複数の弁護士や原告支援活動を主導する元NHK記者の大学教授らが主要メンバーとなっている薬害オンブズパースン会議、そして前述の被害者連絡会はHPVワクチンの有用性を報じたメディアへ抗議を行った。 このような“圧力”によって適切な報道が阻害され、バランスを欠いた“両論併記”報道がなされてきた。 いずれ「HPVワクチン接種率の低下に起因する子宮頸がんによる死者数の増加」が顕著になるだろう。その時に原告の女性たちが責められることだけは避けなければならない。 原告女性やその家族はHPVワクチンを巡る一連の騒動の被害者である。原告とその家族が、責任を負わされたり誹謗中傷に遭うことがないよう留意が必要である。