「不安な人にこそ読んでほしい」 鈴木エイトが傍聴した『HPVワクチン被害』裁判レポート
ワクチン接種前の医療記録
主尋問の本人尋問では、原告代理人が事前に打ち合わせた内容を質問するため、おしなべて原告の意見陳述に沿った内容が再現された。 つまり、HPVワクチン接種前は勉強とスポーツが得意で将来への希望に満ちていたものの、ワクチン接種によって体調不良となり、ワクチンの後遺症によって勉学や就職もままならなくなり夢と希望が打ち砕かれたという内容だ。(原告側による主尋問は原告側弁護団のHPで紹介されている。 https://www.hpv-yakugai.net/2024/08/11/tokyo/) だが、製薬会社(GSK、MSD)代理人の反対尋問では、ワクチン接種前に原告が受診していた医療機関の医療記録(カルテ)などから、原告女性たちには家庭内や学校でのトラブルなど複数の心理社会的因子があり、様々な既往症があったことも指摘された。 最初の原告はワクチン接種前の医療機関(心療内科)のカルテに「トラウマ」「進学のプレッシャー」「リストカット」と記載があり、ワクチン接種後、体調不良を訴えたあとに以下のことを行っていたという質問と確認があった。 「車の免許を大学1年の時に一人で合宿に行って取得」「飲食店やコンビニで長時間の立ち仕事のアルバイトをしていた」「現在は夫と乳児の3人暮らしで保育園の送り迎えは原告本人が行っている」 次の原告も症状に視野障害があることについて、接種後の医療機関のカルテに「母から元々神経が弱くストレスで視野が狭くなる」と記載があり、以下の指摘がなされた。 「ニュージーランドへホームステイをしていた」「公共交通機関を挟み30分歩いて高校に通学していた」「学園祭で和太鼓を叩いていた」「ソフトボールでボールを投げバットを振っていた」
「HPVワクチン被害者としてやめたい」
最も衝撃を受けたのは3人目の原告への反対尋問だった。 原告代理人による主尋問の際、ワクチン接種前のことを「健康そのもの」と答えていた原告女性に、製薬会社代理人弁護士がカルテを基に以下の指摘を行った。 ・ワクチン接種前 「小2の時に両親が離婚、母が再婚した義父の酒癖が悪く暴れた」 「義父が母親を殴り仲裁に入った原告も殴られた」 「小5で過呼吸、小6で母親が義父と離婚、母親が兄と原告を連れて家を出た」 「仲の良かった兄が大学進学で別居」 「中学で不登校に」 「同居する祖父が認知症になり、原告の母親が祖父のお金を盗ったなどの被害妄想が始まり、カルテに“祖父に対応しなくてはならず大変でした”と記述」 「学校でトラウマ、登校拒否に」 「過換気症候群(思春期外来)」 「母親が実父と再婚」 「祖父が躁鬱病・双極性障害、暴れたりした。その後、自死」 ・ワクチン接種後 「注射や薬で嫌な反応なし」 「強い抑鬱、異存」 「不思議の国のアリス症候群」 「自殺念慮」 「統合失調症」 「ひと月前から悪化/雨も降っていないのに土砂降りの雨音が聴こえる。同様のエピソードとして『中2の時に雨が降っていないのに雨が降っている音がする』と母親が問診票に記術」 「対人不安」 「心の底・不安や恐怖心」 「人格統合」 「自我・精神病レベルの考慮も必要」 「小5の時から自分の体が勝手に移動するような体験、それが最近現れるようになった(精神科)」 (精神科に入院)「実父が子どもに無関心でパチンコに夢中『私に関心ないのでは?』」 「仙台に良い思い出がない」 「入院が精神疾患・統合失調症になる不安」 「明るいキャラ作り、疲れる」 ( 大学病院の精神科の心理検査/心理テストで)「小1からすべてやり直したい」 そして2016年、原告女性は大学病院で認知行動療法を受けようとした。しかし全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の池田利恵事務局長から紹介された静岡てんかんセンターで、一部の医師が主張するHPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)と診断を受け、医薬品の健康被害救済を行うPMDA(医薬品医療機器総合機構)から認定を受けたことによって、認知行動療法を受けないことにしたという。 認知行動療法を受けない選択をした理由を訊かれた原告女性は「認知行動療法では治ると思っていなかった。HPVワクチン被害者としてやめたいと言った」「ワクチンが原因だと思っているので」と答えていた。この大学病院のカルテには副反応診断を否定する記述があった。