ルノーが考えた失業問題解決へのアイデアとは? カンヌライオンズ2024に学ぶ 企業の社会課題解決3つのパターン
パターン② 本業の力をフル活用したしくみやモノづくり
仏ルノーは自動車に関する社会課題に向き合う施策で話題を呼ぶ常連だ。今回、ルノーが解決のためにしくみを立ち上げたのは失業問題。フランスでは10人に4人が公共交通機関がゼロの「モビリティー・デザート(交通手段の砂漠)」に住んでいて、そこでは全国平均よりも失業率が高かった。就職すると3カ月の試用期間から始まり、解雇される可能性があるために車のローンを組むことができない。求職者の54%が移動手段の問題で内定を辞退していた。 ルノーの施策は「広告キャンペーン」という言葉の持つイメージを超えている。ルノーは3カ月の試用期間に無料で車を提供し、準備が整ってから支払いがスタートするしくみを構築した。フランス国内の「モビリティー・デザート」にある50のディーラーのネットワークをつくり、6000台のルノー車を供給。公共の雇用サービスである「FranceTravail」と連携して求人広告で広く周知し、大手金融と新しい融資体制も整えた。結果、このしくみを利用した人が、正社員として働く人に占める割合が2.5倍に跳ね上がったという。「SDGs」部門、「クリエーティブ・コマース」部門の2部門で部門の最高賞となるグランプリを獲得した。 マスターカードも自社の持つデータを活用した新たなしくみづくりで社会課題にアプローチした。同社は2023年、ロシアによる侵攻を受けてウクライナからポーランドに逃れてきた難民が住まいを見つけるしくみをつくり出し、カンヌライオンズでグランプリを受賞。今回は、彼らのビジネスを支援するしくみを整えた。 ポーランド国内では雇用などへの不安から難民へのネガティブな見方が広がりつつあった。マスターカードは保有する取引データや人の往来などの様々なデータを駆使し、ポーランド人とウクライナ難民、それぞれのビジネスが相乗効果を生み出せるようなビジネスの立地を割り出せるようなツールを設計した。 マスターカードのキャンペーンによって、「ウクライナの起業家がポーランドで事業を立ち上げると経済にプラスの影響を与える」と答えたポーランドの起業家が10%増加。「マスターカードのブランドは起業家を支援するものだ」と考える割合は、ツールを利用していない人が34%だったのに比べ、利用した人が55%に上昇するなど、企業イメージにもプラスになった。キャンペーンは優れたデータ活用を表彰する「クリエーティブ・データ」部門でグランプリを獲得した。