ルノーが考えた失業問題解決へのアイデアとは? カンヌライオンズ2024に学ぶ 企業の社会課題解決3つのパターン
パターン① SNSで世論を変える
2024年のカンヌライオンズはカザフスタンが初めて賞を獲得して話題となった。受賞したのは同国最大の総合格闘技の興行団体「RUH FIGHTING CHAMPIONSHIP(RFC)」のキャンペーン。カザフスタンで問題となっているドメスティックバイオレンス(DV)について多くの男性の関心を引き付けることに成功した。 RFCはユーチューブやインスタグラム、ティックトックなどで総合格闘技のコンテンツを提供している。2023年に社会的責任を果たすという宣言を発表し、DV問題に照準を合わせた。RFCの視聴者の90%は男性。DV問題への男性の関心が低いことが課題となるなか、RFCの持つ総合格闘技ファンの男性が集まるSNSの基盤を活用したキャンペーンに動いた。 ターゲットはカザフスタンの18歳以上の男性。「男女対抗戦」を企画し、RFCのSNSで告知した。カザフスタンでは総合格闘技の試合は通常男性同士のみ。伝統的に男性は女性に手を上げてはいけないという社会通念があり、異例の企画に対してSNS上で論争が巻き起こった。試合当日、RFCは「年10万回の試合」と銘打って、実際にあったDVの映像を放映した。キャンペーン後、DVに対する刑事罰の法律制定を求める署名に多くの保守派の男性が参加。法案は2024年2月にカザフスタン国会で可決された。 カザフスタンの成人男性の人口が500万人であるところ、キャンペーンがSNSなどでリーチした人数は330万人。SNSなどの優れた活用に賞を贈る「ソーシャル&インフルエンサー」部門で金賞を獲得したほか、「ダイレクト」部門でも受賞候補である「ショートリスト」入りした。 「ソーシャル&インフルエンサー」部門の審査員は審査を振り返って、「キャンペーンの多くは何らかの形でSNSやインフルエンサーを使っているが、なくても成立する。この部門の受賞作はソーシャル上の会話に固く結びついている」と説明する。 同部門では毎年、SNSを使って社会課題への世論を喚起することに成功したキャンペーンがショートリストや受賞作に名を連ねる。2023年に金賞を受賞した英ユニリーバの主力ブランド「ダヴ」のキャンペーンは、ソーシャルメディア上で出回る極端なダイエットなどの有害な情報が女の子のメンタルヘルスに与えるダメージに警鐘を鳴らす動画を制作。10日間で3000万回近いインプレッション(表示回数)となって関連法の成立につなげたことなどが評価された。ブランドの持つ基盤を生かし、SNSを通じて世論に働きかけたことが、社会課題を解決に向けて動かす大きな力を生み出すことにつながっている。