ルノーが考えた失業問題解決へのアイデアとは? カンヌライオンズ2024に学ぶ 企業の社会課題解決3つのパターン
世界最大の広告コミュニケーションの祭典「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」。企業のパーパス(存在意義)や、社会や自然環境にとって良いことである「ソーシャルグッド」に人々の関心が集まるなか、社会的なメッセージ性の高い広告やプロジェクトの受賞が多い傾向が続いている。企業は社会課題解決に向けて何ができるのか、優れた実践と発信のパターンも見えてきた。2024年の受賞作のケーススタディーをお届けする。
広告コミュニケーションの祭典で「ソーシャルグッド」が注目される理由
カンヌライオンズは毎年6月にフランス南部カンヌで開催される。会期の5日間、計30部門のアワードの発表に加え、約150本のセミナーが開かれ、世界的なクライアント企業や広告代理店などが広告コミュニケーションの最新トレンドについて発信する。会期中に約100カ国から1万5000人以上の来場者が集う有数のビジネスイベントだ。 「広告」といってもテレビCMや新聞広告といったアウトプットの出来栄えを競うだけではない。アワードの部門には、ブランディングなどの戦略を表彰する「クリエーティブ・ストラテジー」部門、ターゲットを絞ったキャンペーンがテーマの「ダイレクト」部門といった多岐にわたる切り口が並ぶ。様々なタイプの広告コミュニケーションと、その成功を左右する幅広い要素を評価できるようになっている。 2010年代に入り、目先の利益追求で自然環境や社会に弊害をもたらしてしまうことへの問題意識が高まり、企業も対応を迫られるようになるにつれ、カンヌライオンズの応募作や受賞作でも自社のパーパスや社会課題への姿勢を打ち出したものが急増した。軌を一にして、急速に普及したSNSを広告コミュニケーションでいかにうまく活用するかが一大テーマとなっていく。「ソーシャルグッドとソーシャルメディアの2つの『ソーシャル』が広告産業を変えていった」(カンヌライオンズを長年取材する編集者の河尻亨一氏) こうした流れのなか、ここ数年は「グッド」でなければSNSで消費者から批判が殺到するというような行き過ぎた状況も生まれていた。「パーパス疲れ」という表現も聞かれるようになり、「受賞動向を見ると、人々を笑わせたりして、一瞬で心を動かすような本来の広告の力を見直す動きが強まっている」(河尻氏)。カンヌライオンズは世界の広告祭のなかでも別格の規模を誇り、のちに「常識」となるような数多くの広告コミュニケーションのトレンドの発信地となってきた。2024年はどのような社会課題解決の施策が高く評価されたのか、3つのパターンを見ていこう。