「割り勘」は日本ならでは?世界の割り勘事情とキャッシュレスで起きている変化
大勢で食事をしたときに割り勘にするのは世界共通の文化だと思っている人は多いかもしれない。ライターで編集者の速水健朗さんもそう考えていた。しかし、あるきっかけから調べてみると、日本人ほど割り勘好きな国民はいないことを知ったのだという。 【写真】韓国の男性のほうが紳士的?日韓の恋愛観はこんなに違う 自身のポッドキャスト「速水健朗のこれはニュースではない」(エピソード59)の中で、令和の割り勘のあり方について興味深い考察を展開している速水さんに、世界の割り勘事情とキャッシュレスの普及によって起きている変化について綴ってもらった。 ※以下、速水さんによる寄稿。
レストランで見た驚きの光景
これは、やや階層高めの友人たちとレストランで食事したときの出来事である。支払いのタイミングで全員が同時にすっとクレジットカードを出した。かつて見たことのない光景。へたに「ここは俺も」とカードを出すと、一斉に「どうぞどうぞ」と譲ってくる展開が頭をよぎる。それは杞憂で、ウェイターが当たり前の顔で全員のカードを回収していったので、こちらは慌ててクレジットカードを財布から出し、差し出した。 新手の割り勘のスタイルというわけではなく、海外(主に)では当たり前の方式なのだという。僕だけが知らなかった。ちなみにこの日のメンバーで僕だけが、海外在住経験がなかった。この支払い方式は、単に裏でスタッフが分割して会計を済ましてくれるだけのことなので、別段、新しい技術というわけでもない。むしろ、クラシックな方式だ。このときのレストランは、ベトナムフレンチの名店。外国人の利用者が多いこともあり、その方式に店側が慣れていたということらしい。
世界共通ではない? 韓国人が驚く日本の割り勘文化
英語で割り勘は「split the bill equally」である。アメリカだろうが日本だろうが割り勘は割り勘。それが世界共通の文化かとてっきり思っていたが、気になり調べてみると、必ずしもそうではなさそうだ。日本は世界でも特に割り勘好きの国民として知られている。外国語で書かれた日本のガイドブックを見ると「日本でのデートは割り勘がふつう?」などの見出しのコラムが掲載されている。 とくに顕著なのは韓国。韓国の日本ガイドブックでは、日本人はとにかく割り勘が好きで、幹事が計算して、皆で細かく分けて支払いをするのだと説明している。中には日本人は割り勘でないと怒り出すとまで思っている人々もいるとのことで、むしろ最近のガイドブックでは「そこまで厳格ではない」と注釈を入れている。つまり韓国で割り勘は異文化なのだ。食事の代金は、誰がどのように行うのか。基本、目上の人が払う。同じ年代の学生食堂であったとしても、複数の場合は誰かがまとめて払うのが一般的だという。儒教の文化が根付いているからだろう。