阪神・淡路大震災で被災した人たちを癒し、「復興のシンボル」に…パンダの「タンタン」の、波乱に満ちた生涯
“奇跡のパンダ”タンタン
奇跡のパンダ―。 そう呼ばれるほど波乱に満ちた生涯を送った一頭のジャイアントパンダがいる。名前はタンタン。今年3月に28歳で亡くなるまで長年、神戸の動物園で暮らした雌のパンダだ。 【写真】「隠し撮りがバレました…」パンダと飼育員さんの微笑ましすぎるやりとり 「神戸にパンダなんていたの?」と思う人も多いに違いない。パンダといえばまず思い浮かぶのが上野動物園だろう。1972年に日本中で巻き起こったカンカンとランランの大フィーバー以来、半世紀以上にわたり日本のパンダ界をリードしてきた。関西だと和歌山のアドベンチャーワールドも有名だ。日本最多16頭もの子どもを残した“スーパーお父さん”こと永明のことをニュースで見た人も多いのではないだろうか。 それに対し、今回紹介するタンタンがいたのは王子動物園という、神戸市が運営する公立の動物園。遊園地が併設され地元の子どもたちにとってはかけがえのない憩いの場だが、上野などと比べると決して規模が大きいとはいえない。「パンダ外交」という言葉がある通り、パンダは中国にとって大事な動物。扱いを間違えれば外交問題に発展する恐れもある。 そんなパンダが、神戸の動物園に来たのには理由があった。様々な困難が立ちはだかるものの、王子動物園の飼育員とタンタンは人間と動物の垣根を超えたかたい絆で結ばれ、本場中国の専門家たちも驚く心臓疾患の治療に取り組むこととなる。 2020年から5回にわたって放送したNHKのドキュメンタリー「ごろごろパンダ日記」をもとに、今年3月に惜しまれつつ亡くなったタンタンのドラマチックなパン生と、今なお多くの人たちの心を掴む魅力に迫っていく。(全3回/第1回)
パンダの黄金比…無敵の可愛さを誇るタンタン
「パンダなんて白黒模様でどれも見た目は一緒だろう」と思っている人もいるかもしれない。だがもう一度、ネットで探して見比べてほしい。体型も足の長さも顔つきも十頭十色で、慣れれば見分けられるようにもなる。 なかでもタンタンはとても特徴的だ。白と黒のモフモフとした毛に小さなお尻がかわいらしい。さらにタンタンは子パンダのように小ぶりで手足が短く、まるでぬいぐるみのよう。タンタンの容姿に関してはこんなエピソードがある。 中国から来日した楊海迪(ようかいてき)獣医師から教えてもらったのだが、パンダの顔にはいわゆる“黄金比”というような、かわいく感じる条件があるという。タンタンはその条件を完全に満たしているというのだ。中国ジャイアントパンダ保護研究センターで長年パンダを見続けている獣医師がいうのだから、間違いないのだろう。 そんな無敵の可愛さを誇るタンタンは「神戸のお嬢さま」と呼ばれ、長年多くの人々に愛されてきた。