メタのARグラス「Orion」がヤバすぎる。生成AI×メタバースで何が変わるのか?
この1年、メタは同社の大規模言語モデルLlama(ラマ)の開発に注力しており、メタバース関連の大きな動きは聞かれなかった。VRヘッドセット市場の低迷も相まって、メタバース構想は頓挫したかのように思われたが、AIとAR技術を融合した次世代スマートグラス「Orion」の登場により、同社のメタバース構想に対する見方は大きく変わりつつある。Orionとはどのようなプロダクトなのか、またメタバース構想でどのような位置づけとなるのか、その詳細を探ってみたい。 【詳細な図や写真】Orionの事前評判はすこぶる良い(出典:メタ)
メタのメタバース構想、ARグラスで息を吹き返すか
メタがメタバースへのコミットメントを示すため、フェイスブックから現在の社名に変更して約3年経過した。当初、ザッカーバーグCEOはVRヘッドセットによるメタバース変革を構想していたが、その構想は未だ実現していない。 メタは2014年に20億ドルでオキュラスを買収して以来、AR(拡張現実)およびVRハードウェアとソフトウェアを手がけるReality Labs部門に630億ドル以上を投じてきた。しかし、その成果は乏しく、Reality Labsの2024年第2四半期の売上高はわずか3億5,300万ドルと、全社売上高の1%にも満たなかった。 同期のVRおよびARヘッドセットの世界出荷台数も、前年同期比約28%減の110万台に留まるなど、市場全体の盛り上がりも欠ける状況にある。 VRヘッドセットによるメタバース構想が頓挫したように見える中、メタは別のアプローチで仮想空間と現実世界を融合させる戦略を推進している。その中心となるのが、メガネで現実を拡張する「スマートグラス」だ。 Ray-Banとのパートナーシップによる第2世代スマートグラスは、2023年9月の発売以来、予想を上回る成功を収めている。 カメラ品質の向上、バッテリー寿命の改善、AI音声アシスタントの搭載などの改良が施されたこのスマートグラスは、2023年の年末商戦期にTikTokでバイラルヒットとなった。市場調査会社IDCによると、発売から3四半期で73万台以上を販売したという。 この成功を受け、メタはLuxotticaとのパートナーシップを延長し、2024年の年末商戦に向けてより高機能な第3世代モデルの発売を計画。新モデルはレンズの1つに小型ディスプレイが搭載されると報じられている。 さらに、メタは約10年の開発期間を経て、次世代ARグラス「Orion」のプロトタイプを発表。この発表は、社内外で大きな反響を呼び、プロトタイプを実際に利用した人々からもかなり高い評価を与えている。 たとえば、テックメディアThe Vergeのアレックス・ヒース氏は、ザッカーバーグCEOとOrion上でPongゲームをプレイした際、「ほとんどラグを感じなかった」と報告している。 ARグラス「Orion」の紹介動画