メタのARグラス「Orion」がヤバすぎる。生成AI×メタバースで何が変わるのか?
ARグラス「Orion」、サードパーティの評価は?
メタのARグラス「Orion」が発表されてから約1カ月。サードパーティによる実機レビューが出始めているが、その評価は概ね好評だ。テクノロジーメディア「techradar」のレビュアーは、「プロトタイプがこれほどすごいなら、完成品は信じられないほど素晴らしいものになるだろう」と絶賛している。 Orionの重量は100グラム弱。通常のメガネよりはやや厚みがあるものの、サイズはそれほど変わらない。マグネシウム製のフレームを採用することで、軽量性と剛性を両立。フレームのわずかなずれでも両眼のディスプレイにズレが生じる可能性があるため、この剛性は重要となる。 ディスプレイシステムは、Orionの最大の特徴。レンズは一見すると透明だが、フレームに内蔵された微小なマイクロLEDプロジェクター、シリコンカーバイドコーティング、波形エッチングが複雑に相互作用し、シームレスなAR体験を生み出している。 視野角は70度で、解像度は13ピクセル/度(ppd)。レビュアーは「視野角は狭く聞こえるかもしれないが、実際の使用では視界全体にARディスプレイが広がっているように感じる」と報告。また、瞳孔複製技術により、視線の向きに関係なく同じ画質で映像を見ることができるという。 操作方法も革新的だ。Orionは筋電図(EMG)バンドを採用し、手首の微細な電気信号を読み取って制御を行う。レビュアーは「指と親指のピンチ動作」や「中指と親指のピンチ動作」で、メニューへのアクセスやアプリの操作が可能だったと述べている。ただし、スクロール用の「フリック」ジェスチャーはうまく機能しなかったとのこと。 使用感については、1時間近く装着しても痛みが出なかったという。レビュアーは「Vision ProやQuest 3の体験は素晴らしかったが、15分も経つと1ポンド(約450グラム)のシリコンとプラスチックの重量は意識せずにいられない。一方、Orionはただのメガネ、非常に賢くてAR機能を持つメガネのように感じた」と説明している。 機能面では、ビデオ通話、インスタグラムのARインターフェース、AIアシスタントとの対話、ARゲームなどが体験可能だ。ビデオ通話では、42インチ相当の浮遊スクリーンが現れ、移動しても画面が固定されたままになるという。空間オーディオにより、クリアな音声も実現している。 AIアシスタント「Meta AI」との対話では、現実世界の物体認識能力が披露された。テーブル上の食材を認識し、それらを使用したレシピを提案。食材を取り除くとリアルタイムでレシピを更新するなど、柔軟な対応が可能だという。 ARゲーム体験も印象的だったと評価されている。宇宙ゲームでは視線と頭の動きで宇宙船を操縦し、指のタップで射撃を行う。また、2人のプレイヤーが向かい合って行う仮想卓球ゲームも体験。レビュアーは「プレイエリアの周りを歩いて横から見ることができた。負けた自分のプレイフィールドが輝いていて、触ろうとしたが何もなかった」と、その没入感を語っている。 現在のOrionは解像度13ppdのプロトタイプだが、メタはすでに解像度を26ppdに向上させた次世代モデルも開発中だ。レビュアーは、この次世代モデルでMLBの試合映像を視聴したところ、「選手の顔や野球場がはっきりと鮮明になった」と、画質が大幅に改善したと述べている。 今後Orionのコスト面での改善が進むと、高級スマートフォン並みの価格で販売される可能性もあるという。
執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部