仲がよくても越えてはいけない“心の垣根”があります/塩沼亮潤大阿闍梨「くらしの塩かげん」
1300年間にわずか2人しか成し遂げた人がいない荒行「大峯千日回峰行(おおみねせんにちかいほうぎょう)」の満行者、塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)大阿闍梨(だいあじゃり)。最難関の命がけの荒行を経験し、修験道を極めた塩沼さんがいま切に感じるのは「日々の“あたりまえ”のことこそ難しい」ということ。 塩沼さんの最新刊『くらしの塩かげん』から、私たちの“あたりまえ”の暮らしにそっと光を灯す小さなヒントをお届けします。
心の垣根は越えません。
文/塩沼亮潤 人との距離感というのはとても難しいですよね。 何度も失敗しながら相手との程よい距離感を学んでいくしかないのですが、心がけるべきは「親しき仲にも礼儀あり」です。 いくら仲がよくても、越えてはいけない垣根があり、それを見極めることが大切です。相手のプライベートは聞かない、見ない、もし知ったとしても他人に言わない。つまりは、相手に対する気遣いです。 また、これは食事会などでも言えることなのですが、一人が独演会のように話してしまったり、誰かが傷つくような話題になったりすると、その会食のバランスが崩れてしまいます。全員がまんべんなく気持ちよく話せるように、お互いが気遣う必要があると思っています。 向き合った人の痛みを察し、相手を尊重することにより、それが自然と伝わり、相手も自分を思ってくれるようになる。そんな関係を築けるのが理想です。とはいえ、現実はなかなか難しいことも知ってはいるのですが……。
塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)
1968(昭和43)年、宮城県⽣まれ。1987年奈良県吉野の金峯山寺で出家得度。1999年「⼤峯千⽇回峰⾏(おおみねせんにちかいほうぎょう)」の満⾏をはじめ、2000年には9⽇間の断⾷・断⽔・不眠・不臥の中、御真⾔を20万遍唱える「四無⾏(しむぎょう)」を、2006年には、100日間の五穀断ち・塩断ちの前⾏の後、8000枚の護摩を焚く「⼋千枚⼤護摩供(はっせんまいだいごまく)」を満⾏。同年故郷の仙台市秋保に福聚山 慈眼寺(ふくじゅさん じげんじ)を建立。「⼼の信仰」を国内外に伝えている。簡単なようで難しい日々の「あたりまえ」の大切さを綴った最新刊『くらしの塩かげん』(世界文化社刊)大好評発売中。