〈再発見!〉バラ専門誌編集長に"和"の植物の魅力を聞く【私の植物偏愛記・12月号こぼれ話】
万両(マンリョウ)
とくに寛政年間に流行ったという百両(カラタチバナ)。十両(ヤブコウジ)、千両、そして万両。いずれも品種により実の赤いものと白いものがあり、その実と葉芸を楽しみます。水切れにさえ気をつければ、栽培はラク。日陰~半日陰でOK。 '恵比寿(えびす)'は、斑入りの縮れ葉。細長く角がとれた鷹揚な感じの葉が、鯛を釣ったときの「恵比寿顔」のようで、何ともめでたい感じです。
琴糸南天(キンシナンテン)
南天は「難を転ずる」からめでたい植物とされ、和風の庭の必須アイテムです。琴糸南天(錦糸南天とも言う)は、通常の南天よりも葉が糸のように細く、株も小型で、鉢植えで育てます。樹が充実すれば実もなりますが、主に葉芸を楽しみます。秋には紅葉する品種も。栽培上は、水切れが禁物。 '織姫(おりひめ)'は葉が優美に枝垂れる品種。樹勢は多少弱いのですが、この姿の空気感がイイ感じです。フランスの地方の市庁舎前の植え込みでこの品種と同種と思われる琴糸南天が植栽されているのを見つけたとき、感動しました。 伝統園芸植物は短期間に姿を変える訳ではありません。春の出芽、初夏の葉の展開、そして種類によっては紅葉や結実など、微細な変化が、季節の空気の移り変わりとともに楽しめます。本当は水やりのときなど毎日よく観察した方がよいのでしょうが、ふと気づくと、何か「芸」をしている。じっくり見る。身近に育てていて、とてもうれしい瞬間です。
茶花として愛される 花木の魅力
茶道を学び始めてから、茶花として用いられる花木にもハマっていろいろと栽培していました。テキストでも紹介したように、バラとのつき合いも花木栽培の一環として始まります。 茶花では長期間咲くため夏はムクゲ(木槿)、冬はツバキ(椿)とされます。ムクゲは一日花。ツバキもすぐにこぼれ落ちますが、庭で咲いた花を一輪だけ、季節の草花と一緒に活けると、その一輪だけで部屋が季節の色に染まり、華やぎます。ウメ(梅)は寒の時期から咲き、ほんの数輪でも春の訪れへの期待感を醸し出します。 今回は、ムクゲ、ツバキ、ウメのなかでも特に好きな品種を1つずつ紹介します。