Chill CARS|アウディ《90(2nd)》空気の流れを視覚化する、シックなスポーツセダン。
速度向上や消費エネルギーの節約につながる空気抵抗の低減は、自動車開発における重要なテーマだ。しかし量産市販車において空力の追求が反映されたのは1980年代に入ってからで、その先駆的メーカーが〈アウディ〉だった。 【フォトギャラリーを見る】 1986年、同社のメイン車種《80》を3代目に刷新した際にも、この空力的アプローチを採用。カドが取れた平滑な車体、窓との段差を小さくしたフラッシュサーフェス化など、細部にわたり徹底した空力処理を施していた。2代目が四角い車体だったため、丸いフォルムも当時は斬新に映った。 この3代目《80》の上級版として87年に登場したのが、2代目の《90》だ。《80》と同様に突起の少ない滑らかなデザインを獲得。高級感を増したシックな内装、変更された前後の灯火類などで差別化が図られていた。 さらに《90》では、高性能エンジン搭載や足回り強化により走行性能・操縦性をアップ。中でも象徴するモデルが、撮影車の「クワトロ20V」だ。〈アウディ〉が得意とするスポーツ走行用四輪駆動システムを搭載。優秀なスポーツセダンとして高い評価を得た。 現在では多くのクルマが、《90》以上に優れた空力特性を有する。しかし《90》は、装飾が多めな現代のクルマよりも、空気に逆らっていないように見える。 《90》のデザインがクリーンで美しいのは、目に見えないはずの空気の流れをも視覚的に感じられるからなのかもしれない。
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