心が折れすぎてしまう人たち レジリエンスを高める方法は?
ひどいときは1週間も回復しない
普段はやる気がみなぎっているということは、そこまで落ち込んでも、そのうちすっかり回復して前向きになっているわけですよね。回復までにどのくらいかかるんですか? 「それが結構尾を引くんです。その瞬間だけ落ち込むならまだいいんですけど、ひどい場合は、その週はもうダメでほぼ仕事にならないって感じなんです。ボーッとした感じになったり……そうそう、翌日から何日か休んでしまったこともあります」 そんなに尾を引くんですか。一時的に落ち込むだけでなく、何日もその影響が出てしまうというんじゃ、仕事に支障がありますね。 「そうなんですよ。困っちゃいますよ」 確かに落ち込み方が極端ですね。 「それで困ってるんです。本人もきついと思うんですよ。何とかしてやれないものかと思って……心が弱いんですよね」 うまくいかなければだれでも一時的には落ち込みますが、ふつうはまもなく立ち直れるのに、なかなか立ち直れない。いわゆるレジリエンス(後述)が低いんでしょう。それを高めてあげられればいいんですけど。まずは失敗への望ましい対処法を教えてあげる必要がありそうですね。 「失敗への対処法? どういうことですか?」 うまくいかなかったとき、つまり失敗したとき、極端に落ち込むのは、失敗をひたすらネガティブに受け止めるからですよね。 「そうですね、ネガティブに受け止めるから落ち込みすぎちゃう」 その受け止め方を修正していければ変わるのでは。その方は、失敗の受け止め方のせいで、ひどく落ち込みすぎるという面があるんでしょう。そこを修正できれば、もっとタフな心になっていくことが期待できると思います。 「ちょっとイメージが湧かないんですけど、具体的にどうしたらいいんでしょうか?」
心を回復させる力を身につける
そこで、まずはレジリエンスについて解説してから、失敗の受け止め方をポジティブな方向に修正するにはどうしたらよいかについてのアドバイスを行った。 仕事生活にストレスはつきものだが、ストレスに強い人と弱い人がいる。ストレスに強い人は概して厳しい状況を乗り越えた経験があるものだが、今の若い人たちは、ほめて育てるといった風潮の中で過保護に育てられてきたため、中高年世代と違って厳しさにさらされずに大人になっている。いわば、過酷なストレスをあまり経験せずに育っているため、ストレスに弱い、傷つきやすく打たれ弱いということがあるのだろう。 それによってストレスの問題が深刻化していることで注目されているのが、レジリエンスという性格特性である。レジリエンスは、復元力と訳される。 もともとは物理学用語で弾力を意味するが、心理学では「回復力」とか「立ち直る力」を指す。つまり、ビジネスの世界で使われるレジリエンスとは、ひとことで言えば「回復力」「立ち直る力」ということになる。 どうしたら打開できるか分からないような困難な状況に置かれれば、だれでもストレスを感じる。「どうしたらいいんだろう」と思い悩み、「もうダメだ、どうにもならない」と絶望的な気持ちになることもあるかもしれない。 そこで問われるのがレジリエンスだ。困難な状況にあっても、心が折れずに適応していく力。挫折して落ち込むことがあっても、そこから回復し、立ち直る力。辛い状況でも、諦めずに頑張り続けられる力。それがレジリエンスである。 様々な定義を総合すると、レジリエンスとは、強いストレス状況下に置かれても健康状態を維持できる性質、ストレスの悪影響を緩和できる性質、一時的にネガティブ・ライフイベントの影響を受けてもすぐに回復し立ち直れる性質のことであるといってよいだろう。 このようなレジリエンスが欠けていると、困難な状況を耐え抜くことができない。そのようなときに口にするのが、「心が折れた」というセリフだ。レジリエンスの高い人は、どうにもならない厳しい状況に置かれ、気分が落ち込むことがあっても、心が折れるということはなく、まもなく立ち直っていく。