【天皇賞秋】田原成貴氏が騎手目線で振り返る ドウデュース=武豊のファンタスティック騎乗「どんな競馬でも一流だけど…」
馬も人も千両役者だ! 27日、第170回天皇賞・秋(芝2000メートル)が東京競馬場で行われ、武豊騎乗の2番人気ドウデュース(牡5・友道)が上がり32秒5というワンダフルな末脚を繰り出して激勝。史上7頭目(グレード制導入以降)となる4年連続JRA・GⅠ制覇を成し遂げた。昨年7着とは真逆の結末を迎えた理由はどこにあったのか? 元天才ジョッキー・田原成貴氏(65)が“逆襲V”の真相を騎手目線で語った。 【写真】プレゼンターの佐々木蔵之介(左)から表彰される武豊
想像以上の決め手
戦前は「3強」と言われていた今年の天皇賞・秋。終わってみればドウデュースの独壇場だった。全ての馬を一瞬でなぎ倒したあの切れ味…まるでドウデュースが“何が3強だ。俺をナメるな”と言っている感じ。怒りのドウデュースが強烈なアンサーを返した。 絶対ハナに行くという馬が見当たらなかった今年。ホウオウビスケッツが後続を引っ張る流れはオレの想定通り。ペースも大体イメージ通りのスローだった。(武)ユタカ君にとって、このレースですべきことはひとつだけ。とにかく折り合いをつける。そこだけに専念する。言葉にすれば単純だが、この日の流れでそれは決して簡単なものじゃなかったはず。でも、きっちり折り合いをつけた。さすがユタカ君。ファンタスティックだった。オレは向正面で後方2番手にうまく収めたのを見た時、「ああ、今日のドウデュースは必ず伸びてくる」と思った。ただ、その決め手は想像以上。“法定速度”を超えていた。 ドウデュースという馬は、舞台がどうとか、距離がどうとか、それが問題になる馬じゃない。とにかく折り合いだ。去年の天皇賞・秋(7着)にしてもジャパンカップ(4着)にしても、この馬が負けているのは大抵ひっかかった時。今年のドバイターフ(5着)で直線スムーズな進路取りができなかったのも、ひっかかったから。宝塚記念(6着)で外に出せなかったのもひっかかったのが原因だ。 ひとたびかかれば、そこから収まりがつかなくなるほどパワーを持つこの馬をピタリ折り合わせた時点でユタカ君は直線の脚により確信を持ったはずだ。体感でペースも速くないと分かったはず。これなら有利な瞬発力勝負になるな、と。どんな競馬でも一流だけど、ああいう競馬をさせたら天下一品。馬もスターなら鞍上もスターだ。