進む円安「140円」も視野? 為替介入はあるのか 2つの論点から考える
介入しても“弾切れ”を見透かされる?
仮に円買い・ドル売りの為替介入があった場合、その効果はいかほどでしょう。ドル売り介入の原資となるのは日本の外貨準備高です。直近の残高とその内訳を確認すると、総額は約1.33兆ドルと巨額ですが、そのうち約1.07兆ドルは外貨証券(≒米国債)であり、円買い・ドル売り介入に即時利用可能とみられる外貨預金は0.14兆ドル(約19兆円)に過ぎません。外貨預金の規模感は市場参加者に“弾切れ”を連想させると思われます。2011年10月31日、当時の安住財務大臣は「納得いくまで介入する」としてわずか1日で8兆円の円売り介入を実施した経緯がありますから、もしこの規模で円買い介入が実施されるなら2日分で底をつく計算になります。1日あたり1兆円としても1カ月にも満たない規模です。市場参加者は弾切れを見透かし、すぐに円売り再開となる可能性があります。 というのも、外貨預金を使い果たした後にさらなる円買い・ドル売り介入を実施するには、米国債の売却が必要になるためです。これが円買い・ドル売り介入を考える上で最も重要なポイントの一つです。日本の米国債売却が米金利上昇を誘発し、日米金利差拡大を助長するとの連想が生じれば、逆噴射にもなりかねません。また現在“インフレ退治”の観点からドル高を歓迎している米国を刺激してしまう恐れもあります。そうした危険を冒してまでも米国債売却を伴う為替介入を実施するだろうか、と多くの市場参加者が疑問に思うでしょう。 現在の円安は米国側の要因が大きいと考えられます。日本側の要因で円が独歩安になっているのなら話は別ですが、最近のようにFedの利上げ観測によってドル全面高の状況を為替介入で反転させることは「山を移す」に等しい感覚です。Fedに逆らうのは容易ではありません。
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