【光岡 M55】子供の頃に憧れた国産GTを思い出して---開発者が語る
そして昨2023年秋に『M55コンセプト』をお披露目。「市販化を熱望する1300件余りの応援メッセージをいただき、こちらの思いが伝わった」と喜んだ。しかし「名前の通りコンセプトで終わる可能性が払拭できずにいた」という。その理由はベース車の安定した調達の不透明さだ。そこで今回は、「ベース車(ホンダ『シビック』LX 6速MT)を一旦登録するという条件付きでベース車100台の調達に目処がついた」ことで、市販化に踏み切ったのだ。
◆丸目4灯でテールはブラック
渡部さんの思いを受け、2人のデザイナーが動いた。一人はエクステリアデザインを担当した同社ミツオカ事業部開発課デザイナー渡辺清和さんだ。
「ベースとなるデザインは何か、とよく聞かれる。しかし、そのクルマを置いてデザインしたわけでも、何かのクルマを想像しながらデザインしてもいない。自分の小さい頃の記憶、印象に残った強烈なクルマの記憶を凝縮してひとつの形にできないかと思ってデザインした」と話す。従って、「人によってベースが何になるのかは違うだろうし、でもそれが正解。それぞれ、あの時に憧れたデザインだなと思ってもらえれば」と述べ、「基本的なデザインは自分の中に蓄積された小さい頃の記憶をただただ美化したみたいな感じ。なので、本当に一番困るのは、何をベースにデザインしたのと聞かれること。それは多分皆の心の中にあるものだと思っている」と語る。
デザイン的特徴について渡辺さんは、「自分が小さいころに見て格好良いと思ったフロントの丸目の4灯」を挙げる。またリアは、「あの頃よくあった黒をベースにテールランプがあるもので、それを取り入れた」という。そのほかフロントのリップスポイラーや後ろのルーバー、ダックテイルなど、「当時見て格好良いと思ったものは全部取り込みたかった」と説明した。
◆鳩目のシートを
インテリアもこの時代の雰囲気たっぷりだ。変更されたのは大きく2つ。ひとつはシートだ。フルレザーシートを採用するとともに、「丸く金属のパーツを用い、鳩目を表現。往年のGTカーのようなスパルタンなシートをデザインしながらも、大人のフォーマルなデザインも意識している」と話すのは、同社ミツオカ事業部商品企画課課長兼デザイナー青木孝憲さんだ。