AI時代に必要なのは恐怖ではない。チャンスにするための視点とは? 後半(東福まりこ キャリアコンサルタント)
■日本政府のグローバル対応と起業支援策
日本政府もグローバルなテック企業が日本にまだないことに危機感を持っている。そこで文部科学省は学校教育での英語・IT強化を、経済産業省は起業家支援を行っている。 文部科学省は2020年4月からプログラミングを小学校4年生から必須科目にし、英語を小学校2年生・4年生の外国語活動(慣れ親しむ)、小学校5年生・6年生の正式な教科にした。 経済産業省は2014年に日本ベンチャー大賞を創設し(2022年に日本スタートアップ大賞に名称変更)、若者などのロールモデルとなるようなインパクトのある新事業を展開するスタートアップを毎年表彰している。 例えば、2015年にグローバル展開賞・2017年に日本ベンチャー大賞を受賞している大手フリマアプリのメルカリ。2017年11月、本人情報の登録・売上金を銀行口座に振り込む申請期限の短縮・売上金を1円1ポイントに換算にルール改定したことが話題になった。 メルカリは、当時、久しぶりに日本で生まれた「ユニコーン」(企業価値が10億ドル以上の未上場企業をさす。メルカリは当時未上場、2018年に東京証券取引所に上場し現在は最上位のプライム市場に属する)。これには規制重視の金融庁とベンチャー育成に期待をかける経済産業省の攻防があったという。 (参考・メルカリ売上金はポイント 金融庁・経産省と攻防の末 日本経済新聞 2017/11/28) また、2018年にJ-startupという経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムを開始して起業を後押ししている。 (参考・メルカリに続け!ユニコーン候補92社の名前 官民プロジェクト「J-Startup」が目指すこと 東洋経済 2018/06/21)
■グローバル化に対応する
筆者は海外で働いたり海外から仕事を受けたりすることを勧めたが、もちろん日本からビッグテック企業が出てアウトソースする側になってほしいと思っている。とはいえ、今現在生き残るためには政府の支援の効果を待つ時間はなく、個人でグローバル化に対応するしかない。 例えば、日本人が苦手とする英語について。 20年以上前になるが、トルコのイスタンブールを旅行した時、突然日本語で話しかけられた。6歳と10歳くらいの男の子の兄弟が「3マイ1000エン、3マイ1000エン」と言いながら小さな敷物を売りに来たのである。1000円なのは、紙幣でないと銀行で両替できないからだろう。彼らは日本語が堪能なわけでもないし書けるわけでもない。仕事に必要な日本語を話せるだけのこと。 「英語が話せない」と不安を口にする人に限って、世界情勢や政治について語ったり、日常でのこなれた表現をマスターしたりしようとする。それでは範囲が膨大すぎる。 イスタンブールの物売りの子供たちは極端な例かもしれない。ではコンビニで働く外国人はどうか。彼らはレジだけでなく荷物の発送・受取・公共料金の支払や観劇チケットの発行・品物の補充など多岐にわたる仕事をしている。日本語が、彼らの母国で義務教育でないのは言うまでもない。 とりあえず仕事に必要な英語から取りかかればいい。仕事にもよるものの、覚えるべき表現は思ったより少ないことに気づくだろう。仕事であれば自分の意見があるから(英語では特にこれが大切)何とかなる。全て自力でやる必要もない。それこそAIを利用すればよいのだ。