レーダー照射で続く平行線 韓国の対日姿勢の問題点
韓国海軍の駆逐艦による海上自衛隊機への火器管制レーダー照射が大きな問題になっています。日本側が「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為」と批判したのに対し、韓国側は「レーダーを使った事実はない」「北朝鮮の漁船を捜索中だった」などと説明しています。日韓関係が慰安婦問題や徴用工問題でぎくしゃくする中、日本と韓国の両政府はどう対応していくべきなのか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。
「レーダー使った事実はない」
12月20日、石川県の能登半島沖で海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍の駆逐艦から射撃用の火器管制レーダーを数分間照射される事件が発生しました。 日本側はこの事件を重く見て韓国側に抗議するとともに説明を求めました。これに対し、韓国国防省は「哨戒機に向けレーダーを使った事実はない。駆逐艦は、付近の海域で操業中に遭難信号を送ってきた北朝鮮漁船を捜索中だった。レーダーは捜索用に使用したもので、P1哨戒機には向けていない。日本側に脅威を感じさせるいかなる措置もとっていない」との趣旨の釈明をしました。 しかし、わが国の防衛省は、韓国側の主張に反論する文書を発表し、「哨戒機に記録されているデータを基に、電波の周波数帯や電波強度などの慎重かつ詳細な分析を行った結果、当該照射が火器管制レーダーによるものであることを確認した。このレーダーは広範囲の捜索に適するものではない。漁船の捜索には水上捜索レーダーの使用が適当である。火器管制レーダーは漁船捜索目的に使ったとしても不測の事態を招きかねない危険な行為である」と指摘し、韓国側に再発防止を求めました。 また、韓国側が海自のP1哨戒機は韓国駆逐艦の真上を低空飛行する「特異な行動」をとったとしていることについても「P1は国際法や国内法を順守し、駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行した。駆逐艦の上空を低空飛行した事実はない」と否定しました。 24日にはソウルで日韓外務省の局長級協議が行われ、徴用工や慰安婦問題とともに今回の事件が取り上げられましたが、互いの主張は平行線のままでした。 しかし、わが防衛省内には「故意だと疑わざるを得ない」「かなり苦しい言い訳だ」などの声が上がっているといいます。さらに、人為ミスなのか、個人が意図的にやったのか、そもそも作業員が単独で上司の許可なく火器管制レーダーを使うのはあり得ないのではないか、などさまざまな見方が飛び交っていますが、いずれも明確な根拠はなさそうです。私は、韓国艇の艦長やさらに上級の者が指示したのではなく、レーダーを扱う作業員の軽率な単独行動であった可能性が高いと思います。