「ヘルスリテラシー」の重要性―納得する治療を受けるため 患者に必要なこととは
◇診療で目指す“ゴール”
――医師と患者さんが話し合いのうえで、同じゴールを目指すことが重要ですね。 私が専門とする関節リウマチは、治療期間が年単位で、非常に長い期間続くこともあります。患者さんは最初、手や肩など関節の症状があって病院に来ます。検査をして関節リウマチと診断されると、患者さんは「自分の人生は今後、どうなるのだろう」と、非常に心配します。ところが、時間的な制約や診断を受けたショックなどで、本当は医師に聞きたいことがたくさんあっても、その一部しか聞けないことも多いでしょう。 診療で心がけている“ゴール”は、次のようなことです。病気に関する情報をきちんと伝え、患者さんのさまざまな不安を払しょくするとともに、薬の効果と副作用の両方を分かりやすく説明し、メリットとデメリットを理解したうえで自分に合った治療を選んでいただく。関節リウマチであれば、少しでも早く病気の進行を食い止め、関節がこれ以上壊れないことを目指しますし、さらに、肺や心臓、目への影響といった関節以外に出現するさまざまな病型についての知識を習得してもらいます。また、治療を長期にわたって続けなければならない理由、治療をやめられるときが来るのかといったことも含めて理解していただく――そのベースには、客観的なデータや適切な情報があることが重要です。 どの病気であれ、「治りたい」という気持ちはほとんどの患者さんが持っているでしょう。それゆえにわらにもすがる思いで、エビデンスがはっきりとしない治療法や、知人にすすめられた治療法のほうが効くのではないかと思ってしまう患者さんもいます。インターネットなどの玉石混交の情報の中で、どれがその患者さんに効くのか、国に治療薬として認められたものかといったことを含め、患者さんご自身も情報を見極めながら、医師と一緒に治療法を決定していただきたいと考えています。 関節リウマチに関していえば、昔は診断がついてもステロイドと痛み止め程度しか治療薬がなく、患者さんも医師もつらかったと思います。この20~30年で生物学的製剤やJAK阻害薬の登場で選択肢が劇的に増え、同時に理解すべきことも増えました。だからこそ、エビデンスに基づく最新の情報により、本当に患者さんご自身に合った治療を医師との間で合意できることが重要なのです。