「ヘルスリテラシー」の重要性―納得する治療を受けるため 患者に必要なこととは
◇医師にも患者にも難しい新しい治療の“位置づけ”
――科学の進展とともに、新しい薬も次々と生まれる時代になりました。 新しい作用機序(薬が効くメカニズム)の薬が開発され、従来は治療できなかった分野で画期的な治療法が見つかってきています。同時に、その薬の使い方が難しかったり、専門医が少なかったりして、地域によってはその治療が受けにくいということもあります。私たちファイザーはそういった地域差をなくし、患者さんがどこに住んでいようと同じように自分に合った最先端の治療を受けられるようにすることも目標に掲げています。 医学部の授業やその後臨床経験を積み重ねるなかで、医師は多くのことを学び、それぞれ、目の前の患者さんにとって最善と思う治療を提供しています。しかしながら、従来の薬剤とはまったく異なる作用機序を持った新しい薬が出たときに、医師は従来の治療法と比較し、どこに新しい薬を位置づけ、どの患者さんに適用できるか、どの患者さんには使えないか、どうしてその薬が必要なのか――といったことを理解するためにより多くの努力を必要とする時代になっています。 患者さんやご家族にとっても、その難しさは同じです。医師からの話がよく分かったか、どのような情報が理解を助けたか、それはエビデンスに基づく最新かつ適切な情報だったか、あふれる情報の中で本当に自分に合うのはどれか、見落としがないようにするにはどうするか――といったことを整理する力が求められます。そのために、患者さんご自身もヘルスリテラシーを身につける必要があるのです。
◇製薬企業の役割は情報提供による「意思決定の支援」
――近年では、「シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making):SDM*」が重要といわれるようになっています。 SDMは、医師・医療者と患者さん双方の努力が大きく問われます。患者さんは、自分についての情報をきちんと整理して分かりやすく伝えることが必要です。医師・医療者は、患者さんの病気だけではなく普段の生活や仕事などの背景を知り、個人の価値観まで理解が求められます。そのうえで、複数ある治療法からどれが適しているかを一緒に詰めていくというプロセスがSDMです。「シェアード(共有された)」ですから、どちらか一方による意思決定ではありません。患者さんも医師も、双方が自分の考えを伝えることは重要ですし、そのための正確な情報が必要になるのです。 “医療の本質”はそもそも変わらず、先ほど述べたように病気を治し、あるいはきちんとコントロールし、10年後もその後も元気でいることです。新しい薬があれば、それをお互いに理解して最終的な決定ができればいいですね。 製薬企業の立場としては、エビデンスに基づいた情報を提供し、科学的に証明されていないことは明確に「分からない」とお伝えするなどして、SDMによる意思決定のお手伝いができることを進めたいと考えています。 *SDM:患者と医師などの医療者がそれぞれの持つ情報を共有し、十分な理解のもとで話し合いを通じて治療法などについての意思決定をするプロセス