国家を束ねる「正統性」を失った指導者が増えたのはなぜか、21世紀はますます混乱を深める
東西問題は、今では対立の要素が強くなっている。かつては宗主国と植民地、半植民地の関係にあった。やがて先進国と後進国との関係となり、今では衰退する先進国と、勃興するニューパワーとしての新興国という関係である。 G20(主要先進国20カ国)あるいはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)などといわれる新興国は、今後ますます先進国にとっての脅威となるだろう。 経済力において政治力において、さらには軍事力においても、これらの国の勢いは増大することはあれ、減少することはないだろう。
だからこそ「鉄は熱いうちに打て」、今のうちに東の国々をたたいておこうという、東西の雌雄を決める対決の問題となっている。 戦後70年以上、アメリカを中心とした西欧の価値体系が世界を覆ってきたが、今ではその価値体系が危機に瀕している。日本を含めた西欧世界の衰退は、ある意味価値の体系、知の体系の崩壊を意味するのかもしれない。 アメリカをもってしても、いまや西欧的価値体系を納得する形で信頼させる正統なる力がなくなっているからである。
■人類の第4段階 レバノン出身の作家・ジャーナリストであるアミン・マアルーフ(1949年~)は、『世界の混乱』(小野正嗣訳、ちくま学芸文庫)の中で、高名な歴史学者アーノルド・トインビー(1889~1975年)を引用しながら、人類は第4段階に進んだのだと述べている。 トインビーによる第1段階は、人類が素朴な発展をしていた時代で、世界はある意味低いレベルでどこもよく似ていた時代であり、第2段階は15世紀くらいから始まる発展にともなって、逆に独自の異彩を放つ民族的文化の発展がとげられた時代だ。
第3段階は18世紀以降西欧が牽引し、西欧的な価値規範、すなわち近代化に収斂していった時代であるという。 マアルーフは、その後の第4の段階が出現しているという。それは、さらに西欧が価値規範の中心でなくなり、混乱と驚愕の時代だというのだ。21世紀の現在われわれは、この第4段階の文明の段階に入ったのだというのである。 もちろん、この発展段階論はあまりにも単純な枠組みである。だが、戦後80年が経とうとし、今われわれがまったく新しい混乱の時代を迎えていることはまちがっていない。それを解釈する1つの方法ともいえる。