国家を束ねる「正統性」を失った指導者が増えたのはなぜか、21世紀はますます混乱を深める
「東は東、西は西、二つはけっして交わらぬ」(751ページ)と。 なるほど、東西の間には橋のない川が流れているということである。しかし、東とはどこを指し、西とはどこを指すのか。当然東西という言い方にこだわったのは西欧であるから、西欧が西であるということは一目瞭然だが、では西欧とはどこまでを指すのだろうか。 かつて私は今のクロアチアの首都ザグレブ(アグラム)に住んでいたことがある。オスマントルコがウィーン包囲に失敗し、1699年にオスマントルコとオーストリア、ポーランド、ベネツィアが結んだカルロヴィッツ条約によって西欧勢力が盛り返す直前、この都市はウィーン側にあってなんとか持ちこたえていた。
ザグレブのすぐ東がオスマントルコであり、そこから東が始まるとすれば、バルカンより東が東ということになる。 ところが今EUといわれている地域はブルガリアまで入った。通常この地域も西欧ということになり、トルコから先が東ということになる。 しかしトルコは、その一部はバルカン半島にあり、EUに入りたいと思っている国でもある。 西欧はキリスト教国というのなら、トルコは入らない。そうだとすると正教会のウクライナやロシアは西欧といえるのだろうか。
■ロシアや南アメリカは西欧か 少なくともロシアは今では西欧だと思っておらず、非西欧のグループの中に入ろうとしている。 新大陸アメリカもキリスト教布教の地として西欧であるとしても、メキシコ以南の中南米はキリスト教国だが、西欧と言えるのか。これらの地域の宗主国であったスペインの位置取りは、非西欧と西欧の交差点という位置取りだ。 太平洋に目をやると、西欧化の道をひたすら歩んできた日本を除いて西欧だと思っている国はない(日本も内心はそう思っていないはずだ)。中東やアフリカ、中南米、東アジア、東南アジア地球のほとんどの地域は非西欧だと思っているはずである。