富士山からの清冽な伏流水が湧きだす水の都・三島を歩く
こんこんとあふれる湧き水は、とても清々しい。富士山の伏流水を求めて、静岡県三島市を訪ねた。 「ようこそ三島へ」と迎えてくれたのは、ボランティアガイド「三島市ふるさとガイドの会」の三浦陽子さん。予約をしておけば無料で市内をガイドしてくれる。 三島駅周辺に点在する三島湧水群は、1万年以上も前の富士山の噴火で流出した溶岩の末端部から湧き出ているといい、ほぼ平坦なルートで気軽に見て回れる。象徴的なスポットが源兵衛(げんべえ)川だ。全長約1.5キロの灌漑(かんがい)用水路で、三島駅前の楽寿園から湧き出す水が源流となり、南に位置する中郷(なかざと)温水池へと注ぎ込む。 楽寿園は明治中期に小松宮彰仁(こまつのみやあきひと)親王の別邸として造営され、現在は三島市立の公園となっている。敷地内の小浜池には富士山の雪解け水が湧き出し、夏場には水で満たされる。訪れた時は水がたまっておらず溶岩の痕跡が見え、富士山が活火山であることを物語っていた。池のほとりに立つ楽寿館は京風建築の数寄屋造りで、ふすま絵や天井絵が美しい。 【写真】絶対に食べたい桜家のうなぎ重箱(一匹)5280円
源兵衛川の川面をゆく
楽寿園の向かいには白滝公園があり、桜川が流れている。ここも湧き水スポットだ。木漏れ日がキラキラと差し込む下で、子どもたちが水遊びをしていた。「ここは真夏でも涼しいんですよ」と三浦さんが教えてくれた。 気に入ったのは、白滝公園から三嶋大社へと向かう「水上(みずかみ)通り」だ。車道と民家の間に橋がいくつも架かり、川が生活に溶け込んでいる。 伊豆国一の宮である三嶋大社は、福徳の神として信仰を集めている。旧東海道に面し、下田街道の起点でもあり、私も旅の安全を祈願した。客殿の近くにある「生玉水(いくたまのみず)」は井戸から湧水を引いているという。名物の縁起餅「福太郎」を味わいながら、しばし足を休めた。 「三島梅花藻(ばいかも)の里」では、ミシマバイカモを間近で観賞できる。ミシマバイカモは楽寿園の小浜池で発見され、梅の花のような小さな白い花を咲かせる。冷たくきれいな湧水かつ流水でしか育たないといい、かれんな花に心が洗われる。