移転によりさらに進化した「麻布台 中むら」店主が心からリスペクトする行きつけとは?
「神楽坂でお店をオーブンし最初は閑古鳥、融資資金もすぐに底をつきそうなとき、ありがたいことに少しずつ神楽坂の方々が常連様になってくださり、3、4年が経った頃から他方面の多くのお客様にも足を運んでいただけるようになりました」と中村氏。 同時にその頃から頭を悩ませていたのが和牛。昔と比べ脂が強く肉の味が弱く感じてしまうようになり提供できない和牛も多くなっていた。その頃、川岸牧場やこだわりのある生産者、幾多の名店の店主などから食材提供の話が舞い込み、常に話し合い互いに理解を深め素晴らしい食材に囲まれるように。 「そこにコロナ禍。一旦は要請に応じて閉めたのですが、こだわりの強い生産者の方ほど存続の危機にあることを知り、店を再開し、賄いになること覚悟で買い続けたのです。結果、生産者の方々や仲買の方々、こだわりのある素晴らしい店主の方々とより強く繋がるようになり、和牛だけでなく魚介も一級品が手に入るようになりました。常に支えてくださるお客様、生産者さん、スタッフに本当に毎日感謝しています」と中村氏は振り返る。 このように一級品がそろう「麻布台 中むら」だが、「料理人の仕事の9割以上を占めるのでは」と中村氏が話すのは整理整頓、掃除などの衛生面。「どうしても見た目の良い仕事に重きを置いてしまいがちですが、料理人はお客様の身体を預かる仕事。整理整頓、掃除、衛生面に重きを置くべき。そうすれば技術や知識は後からついてくると思います」
日本の技術に恥じない堅実な仕事をこれからも
「麻布台 中むら」は、炊きたての土鍋ご飯のおいしさにも定評がある。使用するお米は、コシヒカリの全国生産量の約0.0038%という希少米「雪椿」、無農薬栽培の「クラシックコシヒカリ」の2種類。神楽坂時代から使ってきた信楽焼の土鍋は、偶然にも「雪椿」が推奨する雲井窯のもの、おいしくないわけがない。