「結構ボリュームがある」「この値段でこの美味しさは凄い」…。ガストの「1990円・高級フレンチ」に見るファミレス業界の変容
このような状況の中、ファミレス各社が現在行っているのは「ファミレス業界内でのポジションの再構築」である。これまでは「ファミレス=安めのレストラン」「家族で行けるレストラン」という印象だったが、各社がそれぞれの強みを発見しながら、より強く独自の色を付けようとしている。 特にインフレが続く現在、各社の値段に対する戦略を見ると、そのポジショニングの再構築がよくわかる。 例えば、ガストは2023年度、アルコールの値下げを行うことで、全体的に「低価格」路線を突き進んでいる。
一方でサイゼリヤは価格を据え置き。単に利益を減らすのではなく、メニュー数を減らすことで業務効率を上げ、より「ファストフード」に近い「ファストカジュアル」なる業態へと鞍替えをしようとしている。 最近、「サイゼのメニューが少なくなった……」という投稿をよく見かけるが、それはこうした政策の一環である。 逆に、高価格帯であるロイヤルホストは、「高価格帯・高品質」でサービスも向上させる方向に振り切っている。
ガストなどで見る「配膳ロボット」の導入も行っておらず、割引も行っていない。こうした「高価格帯への訴求」がうまく働き、運営元のロイヤルホールディングスの2024年12月期の中間決算は、売上高・営業利益ともに過去最高を記録している。 このように、特に価格に注目した場合、「低価格」と「高価格」の二極化がファミレス業界では進んでいる。 ■特に厳しいのは、中価格帯ファミレス そうなると、苦境に立たされるのは、いわゆるどっちつかずの「中価格帯ファミレス」だ。
例えば、「ジョナサン」は代表的な中価格帯レストラン。運営元は「すかいらーくグループ」で、同企業内でのガストとのポジショニングの違いが求められているのだろうか、商品はガストよりも全体的に数百円ほど高い。 その苦境は店舗数によく表れている。10年間という期間で見ると、もっとも多かった303店舗(2015年12月期)から188店舗(2023年12月期)と、100店舗以上を閉めている。割合にして38%も少なくなった計算である。同期間でのガストの閉店率が8%程度の減少にとどまっているのに比べ、はるかに大きい割合で店を閉めている。