斎藤元彦知事問題で「女性社長が盛った」は本当なのか…弁護士会見が残したナゾと検証すべきこと
元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士が指摘
兵庫県の斎藤元彦知事と知事の代理人弁護士が11月27日、別々に記者会見をした。双方が、PR会社の女性社長が先の知事選について「自分がSNS戦略を企画立案した」などと投稿して知事らに公職選挙法違反などの疑いが浮上した問題に言及。知事の弁護士は「投稿には全く事実ではない記載がある」とした。しかし、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「その会見には疑問が残る」と指摘している。 【写真】「相変わらずお美しい」の声 『ゴゴスマ』に初登場した女性コメンテーターの姿 ◇ ◇ ◇ 「『盛っておられる』というふうに認識しております」 それは淡々と事実だけを述べることが多い弁護士の会見では、あまり聞かない言葉だった。斎藤氏の弁護士が記者の質問に「女性社長が事実を誇張した」と強調するために使用した「盛った」というインパクトの強い言葉は、瞬く間に拡散した。これを受けて女性社長のプライバシーを巡る報道も過熱している。 果たして、この問題を「女性社長が盛った」で片づけていいのだろうか。実は今回の弁護士会見では、多くの疑問点が浮き彫りとなっていた。斎藤氏の弁護士が行った主な弁明は次の通りだ。 まず、斎藤氏が選挙のSNS戦略に報酬を払っていたら「買収罪」になってしまうので「PR会社にはポスター代約70万円しか払っておらず、SNS戦略の報酬など存在しない」と主張した。 しかし、無料で「会社」にSNS戦略をやってもらったとなると、今度は「会社による違法な寄付(企業献金)」として政治資金規正法違反のおそれが出る。そこで、弁護士は「SNS対応をしたのは『PR会社』ではなく、女性社長『個人』」と強調。さらに寄付になるような「価値あるSNS戦略」を女性社長が行ったことはなく、SNSを監修したのは斎藤陣営だったとし、全ては「女性社長が、自分は大仕事をしたと話を『盛った』だけ」という主張をしたのだった。 だが、この斎藤氏側の主張には欠けているものがあると私は思う。それは「証拠」だ。 もちろん、刑事裁判では「疑わしきは罰せず」という原則があり、証拠の用意は被告人ではなく捜査機関側の責任だ。しかしながら今、問題なのは、斎藤氏が政治家として選挙に関する「疑惑」を否定できるかどうか。斎藤氏が疑いを否定したいなら、ただ「違います」と言うだけではなく、一定の証拠や根拠がないと説得力に乏しい。 しかし、斎藤氏側がこれまでに客観的な根拠を示したのは、ポスター代の請求内訳や、県と女性社長の契約関係などにとどまる。しかも、ポスター代については契約書がなく、「選挙ポスターは条件内なら公費負担で無料なのに、わざわざ自腹を切る契約をしたのは不自然だ」という疑問も出されている。 さらに今後の焦点になると、私が思う疑問点が2つある。1つは「女性社長の選挙応援は、本当に『会社ぐるみ』ではなかったのか」、もう1つは「斎藤陣営のSNSを監修したのは、本当に『女性社長』ではなかったのか」だ。これらについての斎藤氏の主張が崩れたら、女性社長の応援は「会社による違法な寄付」だった疑いが高まる。そして、この点への弁護士の回答は、歯切れのよいものではなかった。 PR会社の社員が選挙運動をしたかについて、斎藤氏の弁護士は「携わっていないと認識している」としつつも、こう述べた。 「演説会場に社員さんがいたことまでは確認できているんですけれども、その社員さんが何をしていたかは確認できていないです」