チェコも対戦拒否…FIFAは軍事侵攻のロシアをW杯から締め出せるのか…過去にユーゴスラビアが排除された例も
過去にFIFAとヨーロッパサッカー連盟(UEFA)は1992年5月に、国連がユーゴスラビア社会主義連邦共和国へ科した制裁措置に連動して、ユーゴスラビア代表をすべての国際試合から締め出す裁定を下してことがある。ユーゴスラビア代表は、開幕が直前に迫ったヨーロッパ選手権へ出場するため、すでに開催国スウェーデンに入っていたが、出場を拒否され、急きょ代替出場したデンマーク代表が破竹の快進撃を演じて初優勝した。 シュチェスニーが言及したロシアのワールドカップ除外も当時と同じ制裁措置を求めていて、時をほぼ同じくしてスウェーデンサッカー協会も声明を発表。そのなかで「FIFAがどのような判断を下しても、我々がロシアと対戦することはない」と明言した。 そしてチェコ協会が言及した「どのような状況」には、モスクワから中立地開催に変わった場合も含まれている。3協会が不退転の決意を介して、ウクライナへの軍事侵攻の即時中止を求めたなかで、依然としてFIFAは具体的な動きを見せていない。 こうした状況に対して、イギリスの高級紙「タイムズ」は27日付で、サッカー特派員のチーフ、ジョナサン・ノースクロフト記者による、タイトルに「サッカーがプーチンの力の道具になった経緯」と銘打たれた記事を掲載。そのなかでロシアワールドカップ前から続いてきた、FIFAとプーチン大統領の“蜜月ぶり”を痛烈に批判した。 「戦争で荒廃したウクライナの人々の力になろうと、スポーツがあらゆる場所でロシアの蛮行に対して団結しているときに、サッカー界は沈黙したままだ」 UEFAは25日の段階で、5月28日にサンクトペテルブルクで予定されていた、今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝を、パリ郊外のフランス競技場へ変更する決定を下した。ヨーロッパでプレーするさまざまな選手がピッチ上での行動や自身のSNSなどを介してロシアを咎め、戦争反対と平和の尊さを訴えている。 日本代表DF板倉滉が所属するブンデスリーガ2部のシャルケは、天然ガスの生産・供給で世界最大を誇るロシア企業「ガスプロム」のロゴをユニフォームの胸部分から除外。ロシアの企業をメインスポンサーから外す決断に共感した宿命のライバルチーム、ブンデスリーガ1部のボルシア・ドルトムントが財政面での救済措置に手を上げるという異例の展開も生まれている。 サッカー界がさまざまな利害を越えて一致団結して、ロシアの軍事侵攻に対して抗議の意を示しているなかで、前出のシュチェスニーはこんな言葉も残している。 「すべての代表チームが、僕たちポーランド代表を模範としてほしい。次はFIFAがロシアをワールドカップから締め出す度胸があるかどうか。それを見てみようじゃないか」 FIFAは日本時間28日未明に、国際試合をロシアの領土内ではなく代替地で国旗や国歌を使用せずに開催し、選手はロシアサッカー連合(RFU)として参加する制裁措置を発表した。組織的なドーピング問題の制裁措置が科されていた先の北京冬季五輪で、ロシアではなくROC(ロシアオリンピック委員会)として参加したのと同じ形態だ。 さらにUEFAや国際オリンピック委員会(IOC)などと引き続き協議し、状況に応じて必要な追加措置を科す用意があるともつけ加えられた。しかし、現状では3協会が求める全面的な対戦拒否と、ワールドカップからの除外とはまだ乖離している。世界が納得する結論を導き出せるのか。総本山であるFIFAの決断が注目される。