「21世紀のゴジラ」トランプは、中国を踏み潰すなら「中国の失敗」に学べ!
一掃後、街は静かになったものの…
すると、確かに北京の街は静けさを取り戻した。2018年の正月に訪れた時、その半年前に来た時とは別の都市かと思ったほどだ。露店の物売りや、交差点にたむろしていたみすぼらしい人々は消え、バスも地下鉄も楽々座れた。 ところがすぐに、「別の異変」にも気づいた。レストランが臨時休業したり、ホテルの清掃が滞ったりしたのだ。友人の家に遊びに行った時には、家政婦不在で部屋が雑然としていて仰天した。 北京では、急速に経済の停滞と物価の高騰が始まっていた。ホテルの宿泊費もレストランの食事代も、家政婦費用もハネ上がった。 すると、当初は「低端人口一掃運動」を支持していた北京っ子たちも、まもなく憤懣(ふんまん)やるかたない気持ちを市政府(市役所)にぶつけだした。責任者の蔡奇党委書記は、頭髪が薄いことから、「北京をハゲにしたハゲ」と揶揄(やゆ)された。ちなみに現在は、共産党序列5位まで出世し、習近平主席の最側近の党中央弁公庁主任として、すべての行動を共にしている。 結局、2018年3月の全国人民代表大会が明けた頃から、「低端人口」と呼ばれる人たちは、なし崩し的に北京に戻ってきた。北京っ子も、今度は熱烈歓迎し、北京は再び活気に満ちた都市となった。 これと同様のことが、不法移民を追い出した後のアメリカでも起こるのではないだろうか? 後編記事【イーロン・マスクも見放すか…?トランプが「2018年」と「2030年」の習近平と同じ道を辿る、その可能性】では、トランプの矛盾点についてさらに解説する。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)