【後篇/試乗動画付き】フェラーリ12チリンドリ国際試乗会速報 エンジン総編集長のムラカミがリポート 走りっぷりの凄さに、言葉が出ない!
乗ってわかった、これが12チリンドリの本当の姿だ!
ルクセンブルクで行われた最新の12気筒FRのフェラーリ、12チリンドリの国際試乗会は雨で始まった。雨の日にフェラーリの12気筒モデルに乗ることほど怖いことはない。確かにかつてはそうだったが、いまは違う。ウエットの峠道で驚きの性能を見せた【前篇】に続き、天候が回復した【後篇】では、いよいよその真価に迫る。 【写真58枚】世界で唯一残った自然吸気12気筒エンジンを積むフェラーリ12チリンドリの詳しい写真を見る ◆音と加速感だけで十分価値アリ それはともかく、やがて空が晴れてきて路面も乾き、思う存分、飛ばせるようになってきた。12気筒エンジンのトルクの太さは凄まじく、2000rpmも回していれば不足なくどんな一般道でも走れてしまうが、それではせっかくここまで来た甲斐がない。左のパドルを引いてデュアルクラッチ式8段マニュアル・トランスミッションのギアを落とし、右足に力を入れて回転数を上げていく。その時の素晴しいエンジン・サウンドとリニアな加速感の気持ち良さときたら、これを味わえるだけで、十分にこのクルマを手に入れた価値がある、とオーナーは頷くに違いないと思えるものだった。 ホイールベースが2cm短くなっことや後輪操舵が付いたことが効いているのか、コーナーに進入していく時のクルマの動きが実にスムーズでスッーと曲がってくれる感じだ。ロング・ノーズ、ショート・デッキのFRスポーツカーは、どうしても先にノーズが入ってから自分も曲がっていく感覚があり、812にも若干そんな感じがあったが、12チリンドリにはまるでもっと小さなクルマに乗っているような一体感がある。 時速60kmを超えると10度せり上がってダウンフォースを稼ぐという、リア・ハッチの左右に隠されたウイングもきっと走行安定性に貢献していたに違いない。このウイングは時速300kmまでせり上がったままになり、時速250kmで約50kgのダウンフォースを発生するという。さらにフルブレーキング時には、エア・ブレーキのような働きもするというからサーキット走行時などは効果を発揮するに違いない。 一方、コンフォート方面の装備の充実ぶりも特筆すべきものがある。前述したマッサージも使ってみるとなかなか快適だったが、そのほかにもアダプティブ・クルーズ・コントロールにサラウンド・ビュー、レーン・キープ・アシスト、エマージェンシー・ブレーキ・アシスト、交通標識アシスト、さらにはドライバーの眠気を感知して警告する装置も付いている。このパフォーマンスとコンフォートの融合は、フェラーリ自身が、「真のジェントルマン・ドライバーのための史上最も完成されたフェラーリGT」と謳うだけのことはあるのだ。 さて、最後にグッドイヤーのテスト・コースのことを書いておこう。実はこの日、一般道での試乗車が履いていたのはミシュランのパイロット・スポーツ5Sだった。これも素晴しいスポーツ性能とコンフォート性能を兼ね備えていたが、テスト・コースで乗ったグッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツのダイナミック性能も特筆すべきものだった。 テスト・コースを持つグッドイヤーのイノベーション・センターに到着すると、まず開発に使われたというシミュレーターに試乗した。イタリアのフェラーリ本社にあるフィオラノのテスト・コースがそのままシミュレートされており、これを使ってイタリアとコンピューターを繋いで開発を進めることで、効率を一気に高めることができるのだという。そのおかげで、このタイヤの開発期間はわずか18カ月。実物のテスト用タイヤ製作もわずか4回だけで開発を終了できたというから、かなりの効果があったと言っていいだろう。 で、そのタイヤのパフォーマンスはどうだったかと言えば、私としては、その前にテスト・コースの難易度の高さに呆然としてしまった。サーキットよりもさらにコーナーの曲率が大きく、曲がりくねっている上に、コース幅が思い切り狭いかと思えば、直線が1kmもあって、時速300kmも出てしまう難コースをインストラクターの後について走るのだが、まるで容赦してくれず、ガンガン飛ばしていくので、とにかく付いていかないとコースもわからなくなってしまう。実はこの日、私は肩の骨折がまだ治っておらず、左手が思うように動かせなかった。にもかかわらず、再び降り始めた雨の中、まがりなりにもインストラクターについて走り切れたのだから、タイヤもクルマも群を抜いたパフォーマンスを持っていたということだろう。 最後にインストラクターの運転するクルマの助手席に乗せられて同乗走行を体験した時には、もうヘトヘトで、あまりの走りっぷりの凄さに、言葉を発することもできなかった。 それにしても、一般道をあんなに快適に走れるラグジュアリーなスーパースポーツGTが、クローズド・コースではこんなにズバ抜けたパフォーマンスを発揮するとは。この幅の広さこそが、フェラーリが12チリンドリに求めたパフォーマンスとコンフォートのパーフェクトなバランスということかと、私は深く頷いた。 文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=フェラーリS.p.A ■フェラーリ12チリンドリ 駆動方式 フロント・ミドシップ・縦置きエンジン後輪駆動 全長×全幅×全高 4733×2176×1292mm ホイールベース 2700mm 車両重量(車検証) 1560kg エンジン形式 直噴V型12気筒DOHC 排気量 6496cc ボア×ストローク 94.0×78.0mm 最高出力 830ps/7750rpm 最大トルク 678Nm/7250rpm トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイル ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク タイヤ (前)275/35ZR21、(後)360/30ZR21 車両本体価格(税込み) 5674万円 (ENGINE Webオリジナル)
ENGINE編集部
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