カブトムシが世界のゴミ&食料問題を解決!? ''好き''の追求は必ず誰かの役に立つ #豊かな未来を創る人
2年間の試行錯誤で生まれた独自技術
── ペット販売が順調だったところ、ゴミを紐づけた事業が生まれたきっかけは? 健佑 ある日、重大な事件が起きたんです。カブトムシに与えるエサに害虫が発生して、エサ代がとんでもない額に。会社存続の危機でした。 陽佑 もちろん僕たちもそうですが、一番焦っていたのは、銀行の貸付担当の人ですよね......。みんなで頭を抱えていたときに、あるキノコ農家の方が処分する廃菌床がエサに使えるかもしれないと教えてくれたんです。そうしたらその銀行の方がツテを使って、農家や畜産業者などの有機性廃棄物を出すあらゆる事業者を紹介してくれました。
── そこで有機性廃棄物をエサにするという発想が生まれたんですね。 健佑 そうですね。でも、そこから実現に至るまでが、長い道のりでした。というのも、有機性廃棄物はそのままの状態では、カブトムシは食べられない。微生物の力で分解して無害化する必要があるんです。そのために発酵菌と、米ぬかや酒粕を加えるなど、自分たちで実験をして、温度や配合のデータを何度も取りました。失敗を繰り返しながら、なんとかエサの加工技術を見つけていったんです。 陽佑 もう一つ独自に研究したのは、有機性廃棄物の処理に特化したカブトムシの開発です。これはある日、山で有機性廃棄物が不法投棄されている場所を見つけて、興味本位でそこの土を掘ってみたんです。すると、カブトムシの幼虫が出てきました。これを持ち帰って交配させ、ゴミをたくさん食べられるカブトムシを作っていったんです。試行錯誤に2年を費やした結果、僕たちが育てるカブトムシは、通常より3~4倍早いスピードで成長するようになりました。
── ゴミの処理だけではなく、カブトムシをタンパク質にする取り組みは、どんな経緯で生まれたのでしょうか。 健佑 有機性廃棄物がエサとして使えるとわかった段階で思いついたんです。ゴミ問題と同時に、食料問題にもアプローチできたらめちゃくちゃすごいのではと。それで昆虫食の開発から着手しました。 陽佑 でも、カブトムシ好きとしては、彼らを直接食べるのは、正直ちょっと難しくて。それで、水産養殖の飼料にするのはどうかという話になって。魚やチョウザメを買ってきて、カブトムシを粉末にしたものを与えてみたんです。 健佑 これが魚粉よりも食いつきが良くて、手ごたえを感じました。現状ほとんど輸入に頼っている飼料を、国内の資源で賄えたらすごいなと。さらに最近では陸上養殖が盛んになっていますが、魚粉を使うとなると、結局海から資源を持ってくるわけで。そこにカブトムシを使えたら、陸で出たゴミを元に、すべて陸の幸だけで海の幸を作ることが可能になる。カブトムシにはそんなポテンシャルもあることが分かって興奮しましたね。