スーパーエルニーニョと暖冬は「異常気象の時代」への入り口? 地球沸騰化がもたらす地球の未来
── 水温が高いことは、残暑も生み出すし、豪雪も引き起こすと。 さらに、北極の寒波は温かい海を目指してくるんです。つまり、寒波は今年の暖かい日本が好きなんです。だから寒波が日本全体にやってくる。 ── ということは豪雪の可能性も高まるんですね......。今までは雪が降らなかったようなところまで雪が降ることも起こり得ますか? はい。もともと北極の寒気は、温暖化が起こる前は北極で安定していたんです。ところが最近は温暖化の影響で北極の氷が減り、北極が不安定になった。国と同じで国内が不安定になると、よその国にフラフラと手を伸ばすわけです。そこで動いた先が暖かい日本やアメリカなんですよね。だから寒波が日本に来やすくなって、九州の方にも行ったりする。 ── 九州でも降雪が起きるわけですね。北極の温暖化が世界中に影響を及ぼしているとは。
スーパーエルニーニョ現象はアナザーワールドへの入り口?
── 地球温暖化によって今まで経験したことがない現象が各地で起こっているんですね。 由々しき事態です。今までは、スーパーエルニーニョ現象が起こっても、振り子が元に戻るように、少しすればまた理屈がつく気象状況に戻ると思っていたんですね。でも、振り子も振り切ったら戻らない。つまり、これまでの常識や理屈がまったく通用しない世界に突入するかもしれない。 その振り子が振り切るポイントのことを専門用語で「ティッピングポイント」といいます。それを超えたらいくら温暖化対策をしても意味がない。現在の常識では、CO2を減らせば地球温暖化は止まると思われているけど、「ティッピングポイント」を超えた世界では、CO2を減らしても、これまでの普通の気象には戻らないのです。まさに「アナザーワールド」が広がっている。 そのティッピングポイントを超えるきっかけは、やはり海だと思うんですよ。さっきも言ったように、海は一旦温度が上がったらなかなか元に戻らない。だからある一定の温度まで海の温度が上がったら異常気象が普通の世界になる。今年はスーパーエルニーニョ現象がその後押しをして、もしかするとアナザーワールドへの入り口にいるかもしれない。 ── なんて恐ろしい......。海温がどれぐらい上昇すると、ティッピングポイントを超えるのですか? 研究者によってまちまちですが、確実に言えるのは、産業革命時の気温から2℃を超えたら、もはや地球は元のような気象状況に戻らないと言われています。現在は、その数値が1.2℃ほどなので、ティッピングポイントは近い。 ── そう聞くと焦りが生まれます。このままいくと、あと何年ぐらいでティッピングポイントを超えるのでしょうか。 このままいけば、あと10年ほどです。よく聞く「2030年問題」とは、このことを指しているんです。もし、このままティッピングポイントを迎えたら、我々の生活のさまざまなことが変わり、異常気象を受け入れざるを得ない。例えば東京に首都があるのは暑すぎるので、稚内を首都にしよう、となるかもしれない。ティッピングポイントを超えた世界では「異常気象こそがニューノーマル」なのです。