都政のDXに意気込みを示した東京都知事の明言は「自治体DX」に拍車をかけるか
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。 今回は、東京都知事の小池百合子氏と、UiPath プロダクトマーケティング部 部長の夏目健氏の「明言」を紹介する。 「あらゆる場面でDXが加速することを念頭に置いた都政運営が求められている」(東京都知事の小池百合子氏) 東京都知事の小池氏は、2025年1月6日に東京都庁で行った職員に向けた新年のあいさつの中で、上記のように述べて都政のデジタルトランスフォーメーション(DX)について言及した。その中で、「デジタルの力を有効に活用して、課題解決のスピードアップを図る。そして東京の底力を生かし、未来を確かなものにしていこう」とも。その意気込みが印象的だったので、新年最初の明言として取り上げた。 小池氏は新年の挨拶の中で、キーワードの1つとして「デジタル」を挙げ、次のように話した。 「2025年は昭和が始まってちょうど100年の節目だ。そして私たちは今、デジタルの波によって全く新しい時代の幕開けを迎えている。ましてや、コロナ禍の前と後では人々の意識、行動、またライフスタイルも大きく変わった。好むと好まざるにかかわらず、政治、経済、社会などあらゆる場面でDXが加速することを念頭に置いた都政運営が求められている」 「気候変動、人口減少、AI、さらには、日本経済をけん引してきた大企業をものみ込む産業構造の変化など、世の中の流れは極めて激しく、急だ。デジタルの力を有効に活用して、課題解決のスピードアップを図る。そして東京の底力を生かし、未来を確かなものにしていこう」 冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。 また、別のキーワードとして「時間」を挙げたが、この中でも次のようにデジタルに言及した。 「1日24時間0分0秒の時間をいかに節約し、スムーズな流れの中に都民の自分時間、『手取り“時間”を増やす』か。ここもデジタルの力が有効だ。例えば、子供DXの保活ワンストップサービスは、面倒な手続きを一気に短縮できると、仕事に、子育てに忙しいカップルから大変好評をいただいている。これを局や分野を越えた『政策DX』とし、さらには、国や都、区市町村といった組織に横串と縦串を刺す業務改革、すなわち『ビジネスプロセストランスフォーメーション(BPX)』を当たり前にすることだ。生成AIも徹底的に使いこなしてほしい。職員の皆さんの“時間”も、これによって有効に生かせるようになる」 DXのみならず、「生成AI」や「BPX」という言葉が出てくるあたりが、デジタル、そしてそれを使った業務改革に熱心な小池氏らしいところだ。「1日24時間0分0秒の時間をいかに節約」との表現にも着目した。「1分1秒を無駄にしない」ことも言い方を変えると新鮮に聞こえる。 都政のDXへの取り組みについては、東京都デジタルサービス局が資料を公開しているので参照していただきたい。 また、本サイトでの別の連載「一言もの申す」から、2022年9月15日掲載記事「東京都のDX推進は区市町村に浸透するか」、および同年11月10日掲載記事「行政のDXに必要なものは何か--宮坂学 東京都副知事に聞いてみた」でも、本格的に動き出した都政のDXについて筆者なりに解説しているので参照していただきたい。 今回の小池氏のDXに対する明言は、都政向けではあるが、全国自治体へのインパクトもありそうだ。「自治体DX」に拍車をかける弾みとなるか、注目していきたい。