大活躍の中日 亀澤を発掘した落合GMの眼力
中日の亀澤恭平・二塁手(26)の全力プレーが新鮮だ。 174センチ、74キロの小兵だが、広角に打てるコンパクトなバッティングと50メートル5秒8の俊足が武器。対左投手では、ベテランの荒木雅博(37)が起用されるが、対右投手での半レギュラーを確保している。規定打席には「14」足りないが、13試合連続安打を放つなど、打率.320は、堂々なる数字で、バントやエンドランなどの小技もうまい。なにしろ果敢なヘッドスライディングに象徴されるような元気一杯のプレーが亀澤の売りだ。かつて阪神の亀山努が、「亀ヘッド」で一世を風靡したが、こちらは、ドラの「亀ヘッド」である。大島洋平(29)と亀澤の1、2番コンビが、他球団からすれば、なんとも嫌らしい中日の攻撃の要となっている。 だが、その亀澤も、落合GMの眼力がなければ埋もれた逸材のままで終わるところだった。人生とは不思議なものだ。岡山の作陽高時代には、甲子園出場経験がなく、野球に力を入れようとしていた岡山の環太平洋大へ野球部一期生として進学したが、中国6大学というレベルの低いリーグのためプロスカウトの目に留まらず、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズで野球を続けることにした。ちなみに昨季ブレイクした又吉克樹(24)は、環太平洋大の後輩。その独立リーグでのプレーが評価されて2011年に育成ドラフト2位でソフトバンクへ入団。背番号「124」で年俸は400万である。 2軍では、主力としてゲーム使われ、3割も打ったが、本多雄一(30)、松田宣浩(31)、今宮健太(23)に、明石健志(29)、金子圭輔(29)らが控えに備えるという分厚いソフトバンクの内野の層を割って入ることができず、3年間、支配下登録もされなかった。そこに目をつけていたのが、落合博満GMである。 落合GMは、その活動のほとんどを、2軍の試合と、アマチュアの社会人、大学のチェックに費やし、一日に2試合、3試合をはしごする日も珍しくない。落合GMは、ほとんどコメントを発しないし、2軍の試合を見ていても特定の選手を狙っていると感づかれる行動を避ける。「落合が狙うなら、まだいけるかも」と、その球団の評価が変わってしまうことを恐れて静かに水面下で行動しているのだ。 その落合GMが、ずっと目をつけていたのが、亀澤だった。現役時代に球界初の調停を申し立てたように野球協約を隅から隅まで知り尽くしている落合は、育成選手が、支配下登録されないまま、3年のシーズンを終えると、選手の権利を阻害しないため、自動的に自由契約となるルールをも熟知していた。亀澤は、昨季が3年目。落合GMは、あまり知られていないそのルールの隙を狙って、亀澤を獲得することを決めていたのである。