考察『光る君へ』39話 惟規(高杉真宙)の死がまひろ(吉高由里子)と賢子(南沙良)をつないだ。道長(柄本佑)は娘の件に気づいているのかいないのか
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。呪詛の果てに伊周(三浦翔平)が、旅先でまひろ(吉高由里子)の弟・惟規(高杉真宙)が。39話「とだえぬ絆」では、印象深い人物ふたりがこの世を去りました。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載41回(特別編2回を含む)です。
まるでコインの裏表
寛弘6年(1009年)。中宮・彰子(見上愛)の第二子、敦良(あつなが)親王誕生。 穆子(むつこ/石野真子)「年子の皇子様だなんて、すばらしいわ」 一条帝(塩野瑛久)のご寵愛深くてなにより……と寿ぎたいのと同時に、皇后・定子(高畑充希)のお産をどうしても考えてしまう。敦康親王を出産したのが長保元年(999年)11月、媄子(よしこ)内親王を産み、亡くなったのが長保2年(1000年)12月。年子出産直後の死だった。お産は命懸けであると改めて痛感するとともに、定子の悲運に思いを馳せずにいられない。 道長(柄本佑)家族の栄華と兄・道隆(井浦新)を中心とした中関白家の凋落は、まるでコインの裏表だ。 土御門殿には多くの廷臣が集まり、産養(うぶやしない)の儀が行われている。道長(柄本佑)が、 「皇子様の誕生を寿いで、よき目を出したいと存じます」 と、双六の盤上で賽を振る。『小右記』でも、寛弘5年(1008年)敦成(あつひら)親王の産養で攤打(だうち……サイコロを振って数で勝負を決める遊び)が行われたとある。 お祝いムードをよそに、まひろ(吉高由里子)が書き連ねる『源氏物語』の執筆メモ。 「魔訶毘廬舎那(まかびるしゃな)」の字が見える。そして「宿世」──。 35帖「若菜・下」に取り掛かろうとしている。新しい命の誕生に喜びが邸宅の隅々まで満ちているであろう土御門殿で、一人こんな話を練っているだなんて、さすがまひろ。まことに根がお暗い……褒めてますよ、念のため。「若菜・下」のあらすじは後述する。
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