考察『光る君へ』39話 惟規(高杉真宙)の死がまひろ(吉高由里子)と賢子(南沙良)をつないだ。道長(柄本佑)は娘の件に気づいているのかいないのか
ドロッドロの「若菜・下」
明けて寛弘7年(1010年)子の日の宴。年が明けて初めての子の日に、帝が廷臣たちに賜る宴の雅やかなこと! 随所でこの時代の歌舞音曲が再現されるのが嬉しい。 『源氏物語』35帖「若菜・下」、執筆快調。 まひろのナレーション「それにしても、この宮をどう扱ったらいいものか……」 34帖「若菜・上」で、光源氏は兄・朱雀院から愛娘の女三宮を任せたいと懇願され、正妻として迎え入れることを承諾してしまった。自他ともに認める源氏の妻であった紫の上は衝撃を受けるが、それを押し隠して理解を示す──。 「若菜・下」は、その続き、光源氏41歳から47歳までの物語だ。 女三宮の幼さに失望した光源氏は、紫の上の素晴らしさに改めて愛情を深く覚える。しかし当の紫の上は、夫に裏切られた虚しさを抱えて日々を送っていた。そしてついに、出家したいと光源氏に打ち明ける。驚いて考え直すよう説得する光源氏だったが、紫の上は病に倒れてしまう。病状は重く、今の住まいである六条院から彼女が少女の頃──若紫時代を過ごした二条邸に移ることになり、源氏は付き添い看病することにした。 夫が身近にいない女三宮のもとに、かねてより彼女に恋焦がれていた貴公子・柏木が忍んで来て、強引に関係を持ってしまう。その結果、女三宮は不義の子を身籠る。 紫の上の病状が落ち着いた頃に光源氏は懐妊した女三宮を見舞うが、偶然、柏木の恋文を発見し、妻のお腹の子の父が誰なのか気づいたのだった。 「(女三宮の)いつもと違うご様子も、この密通のせいだったのだ。なんと情けない」 ドロッドロ展開である。このアイデアを中宮様がご出産でお宿下がりしている間にメモっていたの……? まひろさん、心に鬼を棲まわせているのでは? 創作の鬼を。 集中して書いていたから、道長がやってきていることにも気づかない。この場面、気づかれるまで庭を眺めて佇んでいる道長にも「……なにか御用でございましょうか(声くらいかけなさいよという口調)」と言うまひろにも笑う。 孫の実の父ショックを引きずっていたのか、子の日の宴を為時は早々に退出してしまった。実際、『紫式部日記』寛弘7年1月2日。酔っぱらった道長に父・為時の帰宅について、 「など、御てての、御前の御遊に召しつるに、候はで急ぎまかでにける(君のダディ、せっかく帝がいらっしゃる宴に招いたのにはやばやと帰っちゃったじゃん)」と責められたとある。このエピソードをドラマでこうやって使うのかと……酔っ払った上司に絡まれるのも、元カレが構ってほしげに絡んでくるのも、めんどくさっ。
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