考察『光る君へ』39話 惟規(高杉真宙)の死がまひろ(吉高由里子)と賢子(南沙良)をつないだ。道長(柄本佑)は娘の件に気づいているのかいないのか
帝とおなりあそばす御姿
四納言…公任(町田啓太)、斉信(金田哲)、行成(渡辺大知)、俊賢(本田大輔)と 道長の酒宴。 公任「順当に行ったら次の東宮は敦康様。その次は敦明様だろ。道長の御孫君が東宮となられるのは随分と先の話だな」 一条帝が現東宮・居貞親王(木村達成)に帝位を譲れば、次の東宮は一条帝の第一皇子で皇后・定子(高畑充希)の子、敦康親王。その次の東宮は、居貞親王の第一皇子・敦明王(阿佐辰美)だろう。という話……公任は道長の孫が東宮になるのは随分と先の話と言ったが、敦康親王、敦明王が帝となって彼らにそれぞれ皇子が生まれたら、その皇子が立太子し、道長の孫は東宮とならない可能性だって十分にある。 道長「俺の目の黒いうちに敦成様が帝とおなりあそばす御姿を見たいものだ」 一瞬、座の空気が固まり、篝火の爆ぜる音だけが響く。なんだろう……集まっているのは昔馴染みの男たちで、道長の口調、ぽいとツマミを口に運ぶ仕草はかつてのおっとりした彼のままなのに、この言葉が発する圧力は一体どうしたことだ。しかも東宮にではない「帝とおなりあそばす御姿」だという。 36話()で彼らに「次の東宮のお話をするということは帝が御位をお降りになる話をするということだ」と制していた道長とは明らかに違う。俊賢が率先して「お力添えいたします」と言い切るように、周りがすぐに意に沿った行動を取る立場……道長はまっすぐな目をした男のまま、絶大な力を振るう人間になっているではないか。こわい。
あの世で栄華を
伊周(三浦翔平)が死の床にある。 「俺がなにをした……」 呪詛をした者にはその呪いが返ってくるとは言うが、連日連夜、憎しみを滾らせていれば心身に悪い影響しかないだろう。しかしこの「なにをした」は中関白家の凋落は俺ゆえではないのにということだ。 雪が白梅に薄く積もる。まるで定子が兄を優しく迎えに来ているようだ。皇子を産め! と迫り、荒れ狂った過去も、彼岸では洗い流されて仲の良い兄妹に戻れるのかもしれない。 隆家(竜星涼)「あの世で栄華を極めなさいませ」 伊周と定子の兄妹が輝いていた、雪の思い出の中に溶け込んでゆくような静かな旅立ち。 恨みと妄執からついに解き放たれた。伊周、お疲れ様でした。 伊周の死を行成から報告された直後に、一条帝を襲う体調不良。 「敦康が東宮になる道筋をつけてからこの世を去りたい」 「中宮の出産に紛れることなく敦康の元服を世に示せる」 前回38話で帝は、表向きは元服を先延ばしにしたいという敦康親王の願いを聞き届けてやったように見せて、実際には敦康親王が成人し、立太子できる立場だと公に知らしめるタイミングをはかっていたのだった。帝がそれほどに気を配らねばならないほど、道長の力は大きい。 喪中ゆえに触穢を考慮して、道長に庭から挨拶する隆家。敦康親王の後見宣言とともに、左大臣への忠誠を明言する。けして逆らわない、そのうえで政治家としての地位を確立してみせるという強い意志を感じる。父関白・道隆を亡くし、姉である皇后・定子も、兄・伊周もこの世を去った。中関白家を支える人間はもう自分一人である(※道隆には他にも息子がいるが、ドラマには登場していない)という覚悟を感じる。 隆家の挨拶を受ける、脩子(ながこ/海津雪乃)内親王。 道長と倫子の娘である彰子、倫子の姪である小少将の君(福井夏)の時も思ったが、血縁関係にある登場人物のキャスティングが毎回すごくないですか? 脩子内親王の「定子の娘」感、あとで登場する敦康親王との姉弟感。みんなほんのり似ている。 それはともかく、左大臣を恨み、悔し涙の清少納言(ファーストサマーウイカ)の 「あれほどお美しく尊かった方々が何故このような仕打ちを……!」 と吐く言葉が切な過ぎる。皇子を産め!と定子に迫っていた伊周の姿は記憶から薄れ、登華殿で雪遊びをしていた伊周のほうが強く心に残っているようだ。清少納言の思い出は常に光りに包まれ、美しい。
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