本棚は倒れ食器は散乱、余震続く自宅を離れ…安全な車中泊に「忘れてはいけない」大事なもの
「本当に津波が来る!」
2024年元旦、年が明けたばかりの正月ムードを、能登半島の巨大地震が一変させた。ニュースも正月特別番組も、すべて被災地の映像に切り替わった。 【漫画を読む】地震直後の津波警報で避難したまえだ家。自宅に戻って目にしたものは… 石川県七尾市在住の漫画家が描くリアル体験コミックエッセイ『令和6年能登半島地震体験記』(まえだ永吉著 / KADOKAWA)で1年前の震災を振り返る短期連載の3話目は、著者 まえださんが地震後に自宅に戻った時の無残な様子と、車中泊を余儀なくされた一夜目をお伝えする。 その日、石川県七尾市の自宅で、一緒に暮らす60代のご両親と帰省していた30代の弟さんと過ごしていたまえださんは、近所に暮らす祖父母に挨拶をし、初詣を済ませ、リラックスしていた。 そこに緊急地震速報が入った。直後、異様な音が鳴り響き、まるで洗濯機の中にいるかのような激しい揺れが襲ってきた。 地震発生から12分後、大津波警報が発表された。まえださんの脳裏に、2011年東日本大震災の津波の映像がよみがえった。 「本当に津波が来る!」 迫る危険の予感にまえださん一家は迷わず避難を決める。 まえださんの住んでいる地区は、海も近く、民家のほかはほとんどが田んぼ。指定された避難所は高台にあるため、足が不自由な祖父と長距離は歩けない祖母を連れて行くには、車を使うほかない。 前話「道路は隆起、ひび割れ、陥没…高齢の祖父母を連れ、向かった避難先で起きた想定外のこと」では、ひび割れたり隆起・陥没した道路をよけながら、一家が高台の避難所へと急ぐ様子をお伝えしている。避難所では、友人知人の無事も確認でき、幸運にも津波が来ることはなく、まえださんたちは自宅へと戻った。
毛布とカイロとこたつソックスで防寒対策
1階のリビングは、電気は通っていたものの、物はいたるところに散乱し、父親の大切にしていたコレクションはほぼ全滅してしまった。 キッチンは断水しているうえ、食器は落ちて割れ、前日までに母親が作った料理は台無しになっていた。 さらに、転倒防止の突っ張り棒をしていた本棚は倒れており、まえださんの部屋の押し入れの戸はすべて外れて出入口をふさいでいた。 家族で協力して片づけをする合間も、余震が続く。ニュースでは、今後2週間ほどは同程度の余震に警戒と呼び掛けていたため、夜は車中泊をしようと決めた。 家の隣が空き地になっていたので、まえだ家所有の2台の車に手分けして乗り、ありったけの毛布とカイロとこたつソックスで防寒対策をして寝に入る一家。 だが、そこは真冬の能登である。寒さは尋常ではない。 まえださんは寒さと余震が気になり、一晩に3回もトイレに行き、ほぼ眠れずに朝を迎えたという。 あとでまえださんは「なぜ羽毛布団を持ち出さなかったのか」と不思議に思う。 漫画の続きを読むと、毛布やカイロやこたつソックスではとても及ばない、羽毛布団の威力を知ることとなる。 車中泊に羽毛布団は必須である。